編集後記集
【メルマガIDN 第132号 071001】

■編集後記 スペイン紀行2007 【その1】ソルソーナ市で花展の開催~ことの始まりから出発まで~
 
2007年9月7日~11日に行われた、ソルソーナ市(*)の秋の大祭『FESTA MAJOR de SOLSONA』に日本から松風花道会の17名のメンバーが参加し、古いカテドラル(大聖堂)の回廊で花展を行い、ヨーロッパと日本文化の融合を試みた。また、花展をとおしてソルソーナ市民との交流を図った。フェスタが終了後にスペインの小旅行を行ったので、その内容を数回にわたって書いてみたい。
 *ソルソーナ市:スペインのバロセロナの北西125kmのところに位置する、人口1万人ほどのまち

3年前にピレネーへ行ったことが伏線
 2006年10月に突然、ソルソーナの佐野虔之介さんよりメールが飛び込んできた。「ソルソーナの佐野です」で始まるメールの内容は、ソルソーナ市のフェスタ・マジョールで、ここ3年続けて日本伝統芸能の企画を実施しており、2007年9月の秋のフェスタ・マジョールの<ミニミニ日本文化祭>に華道で参加しないか、という呼びかけだった。
 具体化には、ミニ華道展、および<工房>と称する即席教室が内容になると思う、とも書いてあり、11月8日から13日まで東京に滞在予定なので、その折に具体的なことをふくめ相談したい、というものだった。

 3年前(2004年)の6月に、テニスの仲間のIさんのグループの誘いを受け、「カタルーニャ地方・ピレネー・花・ロマネスク」などの言葉の魅力に惹かれてピレネーの旅行に参加した。そのときに案内してくれたのが虔之介さんと次男の徹心君。
 この旅行では、ピレネーの 花とロマネスク様式の教会 を見るという楽しい経験をさせてもらった。旅の途中、昼の食事、夜の食事でワインを飲みながらたくさんの話をした。私がお花をやっていることを話したらしく、そのことを佐野虔之介さんは記憶していたらしい。

 虔之介さんは1946年生まれ、日本企業の広告担当をしていたが1990年に一家でソルソーナに移住した。どうしてここに住むようになったかという質問に対して、虔之介さんは、日本をはなれるにあたって、学生時代に惹きつけられた10世紀の壁画(写真に示す)のある、カタルーニャの小さな伝統的な街、ソルソーナに決めた、と言う。虔之介さんを紹介するのにこのエピソードが最もぴったりしていると思う。

 以来、虔之介さんは当地において、ロマネスクの研究者、セミナー講師、現地の案内、旅行のコーディネーターなど幅広い活動を行っており、カタルーニャと日本の文化の交流の重要人物として、「影の文化大使」ともいわれている。
 奥さんの和子さんは、カタルーニャの伝統音楽や宗教曲を得意としている、オルフェオ・ソルソーナ(合唱団)でアルトのパートを受け持っている。また、ハーブを使うカタルーニャ料理や「花の造形」など幅広い分野で活躍している。虔之介さんと和子さんには風人、徹心、詞音という名の3人の男の子がある。

たくさんの賛同者を得た
 花道会千葉ブロックの幹事をしているTAさんに、虔之介さんの提案を伝えたら、乗り気の様子。2007年の11月13日に虔之介さんと和子さんと銀座で会った。「ミニ日本文化祭(仮称)参加の誘い」という企画書と、2006年に実施された立派なパンフレット、及び虔之介さんの最近の著書『スペイン、ソルソーナへ 佐野虔之介と家族たち』をいただいた。
 このときには、ソルソーナの秋の大祭「フェスタ・マジョール」の全体の様子、われわれが参加すると仮定したときの日程、どのような内容が考えられるか、などについて話し合った。
 その後、千葉ブロックの会長のTEさんと事務局のTAさんと会談し、前向きに進めようということになった。お二人が、千葉ブロックのメンバーへの打診と、本部よりの参加者を募るための行動を開始した。そして、千葉ブロックから11名、本部からは会長、副会長の参加を得て6名、総勢17名の参加希望者があり当初の想定より大所帯となった。千葉ブロックとしては、毎年開催している「千葉ブロック花展」を2007年度は「千葉ブロック華展 2007 ソルソーナ」として実施することが、2007年2月の総会において決定された。

準備を整え出発
 いよいよ準備開始。千葉ブロックのメンバーは現役で仕事をしている女性も多く、日本発、現地での活動、帰国に対する要求から、4つのグループに分けられた。費用の削減のねらいもあって、ツアーを自主企画することになり、TAさんが大変ご苦労をすることから活動を開始。平行して、実施内容について私が窓口となり佐野虔之介さんとの数え切れないメールのやり取りの結果、下記の4つを中心に実施することを決定した。
 ・日本における華道の伝統と精神についての講演
 ・いけばな体験工房(10組全20名の参加者)
 ・活ける過程を示すデモンストレーションと説明
 ・大聖堂のパテオとコリドーへ作品の展示(9月7日~9月11日)
 そのほか、9月6日のフェスタ・マジョールの開会式へ参加(会長の挨拶)、市長や領事(バルセロナより参加)も出席する晩餐会への参加も公式行事となった。

 通常、花展を行う場合は、デパートなどもその一例であるが、イベント会場や会議室などに活けた花を並べて「花展」と称する場合が多い。当初ソルソーナにおいても通常の花展をイメージしていた。
 私の知人が、「せっかくだから、ヨーロッパの伝統と日本の伝統のフュージョン(融合)をねらったことが考えられないか」と知恵をつけてくれたことをうけて、「2004年に立ち寄った教会など使わせてもらえないだろうか?」とその旨を佐野虔之介に打診した。結果、本尊に石造りの「黒い母子像」のあるカテドラル、サンタ・マリア大聖堂(12世紀に建設)のギャラリーを使わせてもらうことになった。
 格式のある教会(カテドラル)には聖堂の横に中庭と回廊のあるギャラリー(中庭と回廊)が設けられている。この空間の平面図や写真を送ってもらい、ひと味違った花展が出来ると参加者の気持ちも高揚した。

 作品の内容を考えた花材の現地調達のための交渉、いけばな体験工房のためのマニュアルの作成、フェスタ・マジョールの総合案内(冊子)への掲載文と写真の事前送付、講演のシナリオの作成、プレゼン資料の作成などが重要課題。8月19日に全員が集合し、準備の状況と今後の日程と役割分担を確認した。通訳を想定した講演のリハーサルも行い、最後に体験工房や作品の製作に必要な道具類を発送した。
 千葉ブロックのメンバーは精力的に活動し、暑い夏を乗り切って、17名のメンバーが9月4日と5日に2班に分かれて、ソルソーナへ向けて出発した。

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