編集後記集
【メルマガIDN 第134号 071101】

■編集後記 スペイン紀行2007 【その3】ソルソーナ市で花展の開催~いよいよ本番~
 4日にソルソーナに到着し、5日に準備、6日は活けこみ、フェスタのオープニングセレモニー、晩餐会と、準備段階のたくさんの行事をすまし、本番の7日の朝を迎えた。
 まず、教会のギャラリーへ行って前日活けた花のチェック。水揚げの十分でないものが見受けられたので、担当のメンバーが花屋さんへ代わりの花の調達に走る。

 行事の開始は4時からなので、午前中の時間(当地では2時頃までが午前中)を使って、虔之介さんのセミナーで勉強をする。テーマは「サグラダ・ファミリア教会」について。「教会」とは、「サグラダ・ファミリア教会」の始まり、ガウディ、「サグラダ・ファミリア教会」の形式、現在降誕のファサードを担当している彫刻家の外尾悦郎、受難のファサードを担当している彫刻家のスビラックスなどについて1時間半ほど講義を聞いた。

 昼食のあと、作品の写真を撮るために会場へ行ってみて仰天。前日にしつらえたテーブル等の配置と仕上げが跡形もない。後でわかったことであるが、前夜のオープニング・セレモニー用と勘違いして、機材一式を撤収した。間違いに気が付いて、再度会場に機材を搬入したと直後とのこと。あわてて再度配置、何とか4時の開始に間に合わせた。
<講演>
 予定通りに4時から大崎会長の講演を開始した。演題は、「日本における華道の伝統と精神について」。
 まず、日本における「いけばな」の起源について、日本の「いけばな」は伝統文化として、人々の心に深く浸透し、茶道と共に親しまれ、守られ、育てられ、今現在においても、その精神は教養の一助を担っていることなど。
 次に、1917年に押川如水が創立した松風花道会は、1977年より、(家元制でなく)文化庁より認可を受けた法人として運営しているところに特徴があること、松風花道会では、作品を通していけばなの中にある、生命の尊さ、強さ、新鮮さ、やさしさなど、人間の心、魂、感情を強く表現している特長ある流派であること、創流90周年にあたり、本年6月に記念すべき花展を盛大に開催したことなど。
 最後に、参加されているソルソーナ市民、スペインの方々に、表現するために使う、物、技法、感情など、西洋と東洋の文化の違いはあっても、皆様の心に響く、メッセージをお伝え出来たらと願っていることを伝えた。

 以上が講演の概要である。大崎会長の講演の途中、プロジェクターでスライドを映写。松風花道会を紹介をし、創流90周年の時に製作した作品を紹介した。
<いけ花教室 体験工房>
 佐久間功水先生より最初に体験工房について説明した。お花の生け方にはいくつかの方法、すなわち「型」があり、当日は、松風花道会で最も基本的な活け方である「基礎活け」を一緒に行うこと、「基礎活け」では、自然そのままを表現して清楚の花形に活け、枝や花の長さ、さす位置、傾斜、向きなどたくさんの規則があるが、あまり難しく考えないで、ひとつずつ順番に活けてほしいこと、それぞれのグループには一人ずつついてお助けることなど、詩音君が通訳してくれた。

 前もって準備した手順書と図解をもとに花道会のメンバーがそれぞれの体験者をサポートした。

 今回は、花器と剣山などを日本より送り、体験の場を10組分用意したが、合計22組40人もの参加があり、2交代で「基礎活」を体験してもらった。
(写真:ギャラリーの中庭での体験工房)
 作品が完成した後、活けた人に書いてもらった名札と共に、9月11日までのフェスタの会期中、作品を廻廊に展示した。 

<デモンストレーション>
 まず、3人の先生方が花を生ける過程のデモンストレーションを行い、その後、森副会長が以下の説明をした。
 日本でも、一年の四季の移り変わりを通して、生活に密着したいろいろなお祭りや行事で、お花を飾り楽しむ習慣がある、一月一日は、新しい年を祝い「松」を飾り、三月三日は、女の子の誕生を祝い、ピンクの可愛い花「桃」を、五月五日は、凛々しい花「菖蒲」を飾り、元気な男の子が生まれた喜びを表現することを紹介。
 材料は、ソルソーナ近郊の山から調達しした「オギ(ススキ)・ツゲの木」をメインに百合・小菊を使って活けた、使っている器は、竹の表面を薄く削り、手作業で編み込み、色を付けた日本伝統的な「竹かご」を用いていることを説明。
 
 今の季節の九月に日本では、太陽だけではなく月にも感謝し、作物の豊作を願い、祈りを捧げる習わしがあり、夜空に輝く一番きれいな満月、「中秋の名月」に捧げる花として、「投げ入れ」という手法を使い表現していることなど、日本の心を伝えた。(写真参照)
 デモンストレーションでもたくさんの人が参加してくれ、終了後には質問も多くあり、最後に皆で記念写真を撮った。

 6時過ぎにすべての行事を終了。しばらくの休憩の後、9時近くより虔之介さん一家にも参加してもらって打ち上げ会を開催。全員が短いスピーチを行い、成功を祝しておいしく料理を食べ、ワインを飲んだ。
 花展の当日の様子は、現地の新聞《レジオ7》で取り上げられた。「体験工房」の写真と共に、西洋の精神が凝縮された空間と日本の伝統文化である「いけばな」の双方の文化のフュージョンが実現したことが報じられた。【生部】

下記より花展の内容と写真などご覧ください。
http://ryuss.cocona.jp/chiba2007/chiba2007.html

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