■編集後記 スペイン紀行2007 【その6】美術館三昧
ソルソーナでのすべての行事を終えて、9月9日の朝、全員がバロセロナの空港に行き3つのグループに分かれた。一組はロンドン経由で成田へ、もう一組はパリ経由で成田へ。そして見送った7名が残って、オプショナル・ツアーへ出発した。
バロセロナからはジローナ、フィゲラス、ポール・リガットへ足を伸ばし、マドリッドからはトレドへも行った。たくさんの美術館を訪問し、スペインの有名な画家たちの作品を見ることが出来たので、その一部をここに紹介する。
ピカソ美術館(バロセロナ)
スペイン南部のマラガで生まれたピカソは、少年時代、青年時代をバロセロナで過ごし美術の基礎を学んだ。ここではピカソの作品が年代順に展示されているが、私は「青の時代」の作品にピカソの苦悩を興味を持って見た。2004年にもここを訪れているので2回目。
ミロ美術館(バロセロナ)
バロセロナに生まれたミロは生涯カタルーニャ人として生きた。ジョアン・ミロ財団が所蔵している1万点の作品の中から300点あまりが展示されている。カタルーニャの風土を強く残した作品もあるが、モチーフを極限まで単純化した形と色づかいをしたたくさんの作品を見ることが出来る。ここへくればミロのすべてを見ることが出来る。
現代美術館(バロセロナ)
バロセロナの生活の美と文化にポイントを置いた美術館。アメリカの建築家リチャード・マイヤーの設計により1995年に出来た近代的な建物はバロセロナでは異色である。
カタルーニャ美術館(バロセロナ)
ロマネスク、ゴシック、バロック、ルネッサンス美術のコレクションを有する。2004年にボイ谷のサン・クレメン・デ・タウユの教会で見た壁画「栄光のキリスト」とサンタ・マリア・デ・タウユの教会の「栄光の聖母子」はレプリカだったが、念願の本物をここで見ることが出来た。この「栄光のキリスト」は16世紀から17世紀に描かれたもので、保存状態を良くするためにバロセロナへ移されている。
カテドラルの宝物館(ジローナ)
ジローナのカテドラルに併設されている宝物館で「ベアトゥスの写本」を見た。内容はヨハネの黙示録。当日は、「七つの頭と十の角とがあり、その頭に七つの冠をかぶっている赤いドラゴン」の挿絵のページが開いていた。帰国後、「ヨハネの黙示録」を読むことになったが、このお話はまた別の機会に。
ダリ美術館(フィゲラス)
フィラゲスは、ジローナから1時間弱、フランス国境に近い人口3万人ほどのダリが生まれ眠っている町。ダリ美術館を訪問するためにたくさんの人が訪れる。展示物は絵画だけでなく、オブジェなどダリの多彩で遊び心の豊富な作品が全館に展示されている。
ダリの卵の家(ポール・リガット)
ポール・リガットは、フィラゲスからさらにバスで1時間ほど、山を越して北上、フランス国境に近いところにある港町。イベリア半島で最東端に位置する。かつての猟師村に画家が集まって、別荘地になった。ダリは、漁師の家を購入し、改築と増築を重ね自分好みの家と庭を造って、年上の妻のガラとここに住んだ。ダリ好みのインテリヤと庭が残されている。
トレドのカテドラル
トレドはスペインの首都マドリッドから南に70キロメートルに位置する古都。569年に地名をトレドに変えて正式な首都となり、1561年にマドリッドへ遷都されるまでスペインの中心だった。
トレドのカテドラルはスペインの首座大司教座聖堂(総本山の位置付け)。聖具室の中は美術館ともいえるもので、正面にあるエル・グレコの「聖衣剥奪」が有名である。グレコの作品以外にもベラスケス、ゴヤ、ルーベンス、ラファエロ、ティツィアーノなどの絵画が展示されている。
グレコ美術館(トレド)
当日、グレコの家は見入ることが出来ないとのことで、カテドラルから旧市街地を歩いて、タホ川が見える高台にあるこじんまりしたグレコ美術館へ行った。1911年にオープンしたが最近は改装中だったらしい。ここでは入ってすぐの部屋に12聖人が展示してある。
プラド美術館(マドリッド)
スペインの王家の美術コレクションを母体として1819年に王立絵画彫刻美術館として開館し、1868年にプラド美術館として国営化された。中世から19世紀までのスペイン絵画を集めている。ベラスケスの「マルガリータ王女」、ゴヤのの「着衣のマハ」と「裸のマハ」、グレコの「聖三位一体」、ルーベンスの「東方三博士の礼拝」、などを見る。
ソフィア王妃芸術センター(マドリッド)
サン・カルロス病院を改装して1992年にオープン。スペインの現代美術を系統立てて見ることの出来るモダンアート殿堂。ピカソの「ゲルニカ」が有名。ダリ、ミロ、ファン・グリス、などの作品もあるが、青の時代の「青衣の女」ほかピカソの作品を興味を持ってたくさん見た。
ティッセン・ボルネミッサ美術館(マドリッド)
ティッセン・ボルネミッサ男爵が親子二代にわたって収集したコレクションをスペイン政府が買い取り1992に開館。14世紀から現代までの作品が年代順に展示されている。グレコの「受胎告知」、カルパッチョの「風景の中の若い騎士」などが印象に残っている。当日は別室で、ゴッホ展が開催されており、「オーヴェルの風景」はそちらに展示されているらしく、見ることが出来なかった。
美術館を中心に、カテドラルを加えると、12箇所を訪れたことになる。私的な旅行だったので時間配分は自由になったが、それぞれの美術館については、ゆっくりと見たとはいえない。ルーブル、オルセー、ボストンなどに比較して、スペインの美術館は土地のイメージが強烈である。マドリッドの3つの美術館にしても、すべてをじっくり見るためには相当の日時を要すると思われるが、名前を良く知っているスペインの芸術家たちの著名な作品を短期間にたくさん見ることが出来たのは幸運だった。