編集後記集
【メルマガIDN 第149号 080615】

■編集後記  龍のコンサート三昧2008  【その2】ダニエル・バレンボイムとウィーンフィル
ウィーンに到着

 成田を出発し、フランクフルとでトランジット。飛行機は、2008年5月17日(土)の夕方の5時前にウィーン市街の南側の上空を通過。左側の眼下にウィーン市街を望む。シュテファン寺院がランドマークとなり、町並みの中にオペラ座やムジークフェラインザール(音楽友協会大ホール)も確認できた。2006年にウィーンを訪れた後、Google Mapで上空からのバーチャル散策したのが現実のものとなった。
 空港からバスで市内へ。エイズ支援のためのライフ・ボール(Life Ball)が開催されており、24時までリング通りが封鎖されており、バスはホテルから少し離れたところに停車し、歩いてホテルへ。ホテルは目抜き通りのケルントナー通りに面しており、窓の下には、夕方7時頃の歩行者天国の賑わいを見ることが出来た。

再びムジークフェラインザールへ
 5月18日の朝、市内を散歩したあと、11時の開演に合わせてバスでホテルを出発。ほてるからムジークフェラインザールまで歩いても10分ほどの距離なのにバスで行くことになった。今回は勝手知ったホールなのでプログラムを買って開演を待つ。席は17列の7番、申し分のない席である。
(写真はムジークフェラインザールの外観)

コンサートの曲目
 前回の2006年には、アルフレッド・ブレンデルのピアノとベルナルト・ハイティンクの指揮で下記の3曲を聴いた。
 ・モーツアルト:交響曲 第32番 KV 318
 ・モーツアルト:ピアノ協奏曲 第27番 KV 595
 ・ショスタコーヴィッチ:交響曲 第10番 OP93
 今回は、ダニエル・バレンボイムのピアノと指揮で下記の2曲。演奏者は異なっているが、モーツアルトのコンチェルトは偶然同じ曲となった。
 ・モーツアルト:ピアノ協奏曲第27番 KV 595
 ・ブルックナー:交響曲第9番 ニ短調

バレンボイムはピアニストであり、指揮者とオペラの音楽監督も
 ダニエル・バレンボイム(Daniel Barenboim)は, 1942年生まれのアルゼンチン出身のユダヤ人ピアニストで指揮者。現在の国籍はイスラエルである。1950年8月に、まだ7歳の時にブエノスアイレスで最初の公開演奏会を開いてピアニストとしてデビュー。
 ピアニストとして、1952年にウィーンとローマ、1955年にパリ、1956年にロンドン、1957年ニューヨークにデビューして、その後ピアニストとしての名声を確固たるものとする。最初の録音は1954年に行われている。

 バレンボイムが指揮者として一歩を踏み出したのは、1965年にイギリス室内管弦楽団とモーツアルトのピアノ協奏曲を《弾き振り》したことに始まる。1975年から1989年までパリ管弦楽団音楽監督に就任。1991年よりショルティからシカゴ交響楽団音楽監督の座を受け継いで2005-2006年のシーズン終了後まで続ける。
 1992年からはベルリン国立歌劇場の音楽監督に就任し現在まで継続している。更に2007年よりミラノ・スカラ座の「スカラ座のマエストロ」という音楽監督不在の中の事実上の首席客演指揮者に就任している。
 そして、2009年元日に開催されるウィーン・フィルハーモニーのニューイヤーコンサートを指揮することが決まっている。

 バレンボイムについては、1990年に来日したときに、アントニオ・パパーノの指揮で東京フィルハーモニー交響楽団との共演で、ブラームスの二つのピアノ協奏曲を聴いたのが印象に残っている(11月 オーチャードホール)。
 最近のテレビの映像では、2005年の6月から7月にかけて、バレンボイムの現在のホームグラウンドであるベルリン国立歌劇場で行ったベートーベンのピアノソナタ全曲演奏会の様子は熱のこもったものである。

最も楽しんだのはバレンボイム
 ウィーンフィルのメンバーの舞台への登場の仕方には特徴がある。他のパートの全員が席についたあと、弦のパートが聴衆の拍手の中にコンサートマスターと共に登場する。他のオーケストラでは例を見たことがない。ウィーンフィルでは弦のパートが上位に位置づけられているのであろうか。

 バレンボイムが登場して、モーツアルトのピアノ協奏曲第27番の演奏が始まる。出だしの音のきれいさは天下一品。前回の2006年よりはきれいに聞こえた。前回は前から6番目の席で、前過ぎたのが原因かも知れない。

 バレンボイムのピアノ演奏と指揮は明確でわかりやすい。ピアノとオーケストラの対話も、ウィーンフィルならでは和やかに行われた。

 休憩時間のあと、ブルックナーの交響曲第9番が演奏された。ブルックナーはとかくとらえどころのなさが特徴ともいえるが、バレンボイムはこの大曲の構成を分析して組み立て直し、オーケストラの弱音の美しさとダイナミックな音作りを織り成し、このオーケストラの機能を最大限引き出した演奏だった。バレンボイムのオペラでの経験が、ブルックナーを明快に語ることにも発揮されている。

 このふたつの曲の演奏で最も楽しんだのはバレンボイムではなかろうか。ピアニストとしてデビューして、指揮者としての地位を確立し、オペラの世界でも名声を得ている。
 しかし、最近のバレンボイムは、オペラの総監督と指揮に意気を感じつつも、トータルとしてまとめるための細々とした演奏以外の苦労について疲れを訴えている。そして、もっとピアノを弾く機会を多く持ちたいとも。
 このような中で、モーツアルトのコンチェルトをウィーンフィルと《弾き振り》が出来ることは、バレンボイムにとってこの上なく楽しいことだと想像する。聴いているものにもその感じが伝わってきて、その場に居た私も共に最高の楽しみを共有することが出来た。
(写真は、ブルックナーの交響曲第九番の演奏終了後の挨拶)

エピローグ
 コンサートの印象が覚めやらない中で、ツアー参加者全員が近くのレストランで昼食。ウィーンの伝統料理をメインに、デザートにはザッハートルテ。食事中にも、コンチェルトの出だしのウィーンフィル音のきれいさが話題になった。
 ホテルに戻って小休止の後、王宮庭園にあるモーツアルト像を見て、ミヒャエル門へ行って、前回見落とした《ヘラクレス像》と二つの噴水《海の力と大地の力》を見た。
 ウィーンの天気は変わりやすく小雨模様に急変する。急いで写真を撮り、本降りに近い雨の中をホテルへ戻った。

龍のコンサート三昧2006》では、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団とムジークフェラインザール(ウィーン音楽友協会大ホール)についての概要を紹介しています。
2008年のウィーンの写真はこちらでご覧ください
【生部】

編集後記の目次へ
龍のコンサート三昧2008目次へ
龍と龍水のTOPへ