編集後記集
【メルマガIDN 第159号 081115】

■編集後記 ヨーロッパで出会った龍と仲間たち
 私はハンドルネームとして《龍》を、華名として《龍水》を使っている。2004年より《龍と龍水》というホームページを開設し、2006年より《龍の謂れとかたち》というホームページを始めた。出会った《龍のかたち》を写真で紹介し、《龍の謂れ》を知ることで、《龍》に関する雑学を重ねてきた。

《善い龍》と《悪い竜》
 中国では2つの角と五つの爪を持つ《龍》は皇帝を象徴するものとして神聖視されている。わが国では、『古事記』に出てくる《八俣のおろち》の話もあるが、中国と同じような見方をしていることが多い。《龍》を吉祥の印としてあがめられている。

 しかし、ヨーロッパにおける《竜(ドラゴン)》は、秩序を乱す邪悪、醜悪なものとして位置づけられている。キリスト教では、大天使ミカエルや聖ゲオルギウスによって退治される対象となっている。ヨーロッパでは、《悪い竜》の例が圧倒的に多い。英雄に退治される《竜(ドラゴン)》の神話や、竜退治をモチーフにした絵画も多く見られる。ヘラクレスの神話もそのひとつ。

 龍は超自然的な能力を持っている《善い龍》としての存在もある。それは神聖視されるもので、荘厳で、強力な意思を持つものとして崇拝されている。
《善い龍》と《悪い竜》については、メルマガNO138に書いたので参考にしていただきたい。

ヨーロッパのまち歩き
 06年にはベルリン、ウィーン、ザルツブルグへ行き、07年にはスペインへ、08年には、ウィーン、チェスキー・クロムロフ、プラハ、ドレスデン、ベルリンへ行く機会があった。
 ヨーロッパを訪れた主な目的はほかにあったが、07年のスペインと08年のヨーロッパでは、行く先々で《龍》と仲間たちに出会うことを期待して、《善い龍》にも注意を払いながらまち歩きをした。

ミヒャエル門のヘラクレスの彫刻(ウィーンの王宮)
 バロック様式のミヒャエル門は王宮の正門として18世紀につくられたたもので、門の入り口の正面(外側)と内側(中庭側)に、ヘラクレスをモチーフとした8個の彫刻がある。

 06年にウィーンへ行ったときに、王宮の広場からミヒャエル門を抜けるルートを歩いた。そのときには、門の入り口の正面の左側にある《海の力》を象徴する噴水にある彫刻の中にドラゴンの姿を見て、写真にも撮った。しかし、ヘラクレスの彫刻には気がつかないで通り過ぎた。
 帰国後、門の入り口の正面(外側)に4つのヘラクレスの彫刻と、門の右側に《大地の力》を象徴する噴水の中にも彫刻があることを知り残念に思った。

 08年に再度ウィーンを訪れたときに、ミヒャエル門の正面のヘラクレスの4つの彫刻をしっかりと見て写真に収めた。同時に、《大地の力》を象徴する噴水の中の彫刻《竜(ドラゴン)》も見た。
 このときには、門の内側(中庭側)にある4つのヘラクレスの彫刻も見たが、《竜(ドラゴン)》らしき姿をがなく、急に大粒の雨が降り出して、ホテルへもどるのを急いだこともあって写真撮影を怠った。
 帰国してから、門の正面の4体をもとにしてページを作成するためにヘラクレスの神話を調べたときに、《ヘラクレス12功業(難業)》のことを知った。また、ミヒャエル門の正面と内側にある8つの彫刻とこの12功業(難業)の関係について興味を持った。

ウィーンの王宮のミヒャエル門の正面(外側)
アガサ・クリスティの短編小説集『ヘラクレスの冒険』
 ネットなどでヘラクレスの神話について調べていた時に、アガサ・クリスティが『ヘラクレスの冒険』という小説を書いていることを知った。『ヘラクレスの冒険』は、ヘラクレスの12の功業(難業)を下敷きにし、同じ題名で書かれた12の短編小説で構成されていることがわかった。

 早速読んでみた。この本の解説によると、クリスティの小説に登場する名探偵エルキュール・ポアロのファーストネームは、ヘラクレスに当たるフランス語であることのこと。クリスティのしゃれっ気に脱帽。それぞれの短編は、クリスティ特有のスト-リーで構成されていて楽しめた。

ヘラクレスの神話における12の功業(難業)
 ヘラクレスの神話における12の功業(難業)のタイトルは、訳する者によって異なっている。ウィキペディア、平凡社の世界大百科事典(1967年)、クリスティの『ヘラクレスの冒険』を訳した田中一江の訳について違いを見た。

 ウィキペディアの例は、ネットですぐに見ることができるので、ここでは、田中 一江の訳を紹介する。
①ネメアの谷のライオン、②レルネーのヒュドラ、③アルカディアの鹿、④エルマントスのイニシシ、⑤アウゲイアス王の大牛舎、⑥ステュムパロスの鳥、⑦クレタの島の雄牛、⑧ディオメーデスの馬、⑨ヒッポリュトスの帯、⑩ゲリュオンの牛たち、⑪ヘスペリスのりんご、⑫ケルベロスの捕獲

 こんなことをして楽しんでいるうちに、ミヒャエル門の正面と内側にある8つのヘラクレスの彫刻は、ヘラクレスの12の功業(難業)のなかより8つをモチーフとした彫刻ではないかとの想像が、確信に変わった。

 この時点で、門の正面にある4つの彫刻によるページを作成し、彫刻のそれぞれに《12の功業(難業)》のタイトルを当てはめてみた。そして、門の内側にある彫刻の写真を撮り損ねたことの残念さが募ってきた。

地獄の番犬ケルベロス?
(その12)

アマゾンの女王の腰帯?
(その9)

ステュムパリデスの鳥?
(その6)

ゲリュオンの牛?
(その10)
ミヒャエル門の正面(外側)のヘラクレスの彫刻
Mさんの協力によりホームページができた
 そんなときに、近くにお住まいの、ゴルフなどでも親しくさせてもらっているMさんが、近くウィーンへ行く計画があり、ウィーンで時間的な余裕もあることを知った。
 作成したページを見てもらい、事情を説明したら、写真撮影に協力してもらえる返事をもらって喜んだ。ミヒャエル門の内側の彫刻の位置を案内し、撮影に適した時間帯までも伝えた。そしてMさんの帰国を待った。
 Mさんよりいただいたたくさんの写真の中から私なりのストーリーとページの構成を考えて、門の内側のヘラクレスの彫刻によるページを作成することができた。

クレタの牡牛?
(その7)

エリュマントスの猪?
(その4)

ヘスペリデスの黄金の林檎?
(その11)

ネメアの獅子?
(その1)
ミヒャエル門の内側のヘラクレスの彫刻 写真撮影:Mさん
 ミヒャエル門の正面(外側)と内側にある8つの彫刻の写真を並べて、ヘラクレス神話の《12の功業(難業)》のあらすじとの対比を試みた。そして8つの彫刻に8つの功業(難業)を当てはめてみた。

 努力の結果に自分なりの満足感はあるが、これが正しいかどうかはわからない。はじめから、8つの彫刻と《12の功業(難業)》は無関係であるということもありうるが、今の世の中、こんなことを書いていると、誰かが教えてくれることだってあるのではないかと期待している。

 08年の旅行でドレスデンに行ったときに、ツヴィンガー宮殿の北側(劇場広場側)の建物の門に、中庭側に面して4体、劇場広場に面して4体の彫刻があるのを見つけた。ここにもヘラクレスがいるようであるが、これらの話はまたの機会にしよう。【生部】
ヘラクレスの彫刻のホームページは2008年にヨーロッパで出会った龍と仲間たちをご覧ください。

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