編集後記集
【メルマガIDN 第165号 090215】

■よみがえった40年前のチューナー 《サンスイ TU-777》
 サンスイのチューナー《TU-777》は、1968年4月に秋葉原のテレビ音響で買ったもの。領収書が残っており時期の特定が出来た。今回は40年前のチューナーがよみがえって活躍しているお話。
 
 08年には、いろんなものがよく壊れた。オリンピックの期間中にアナログでハイビジョンが再生でききるテレビ《SONY KV-32PW1》がついにダウン。修理に来てくれた技術の担当者もお手上げの様子なので、ついにあきらめて液晶のテレビに買い換えた。
 テープ駆動部が壊れて引退したVTRは、私の部屋で、チューナー部がテレビの音楽番組を聴くのに役立っている。
 PCが立ち上がらなくなり、ハードディスクを交換。定常状態に戻すのに手間と時間がかかった。年末には、プリンターの色が変になり、年賀状が作成できなくなった。修理することをやめて正月の3日にお店に駆け込んで、最新の複合機を購入した。
 以上は、AV機器やPC関連のトラブルであるが、08年の後半には、自分の身体も壊れそうになり、気分としても優れない時期を過ごした。

 そんな中で、チューナーが生き返り、リビングでFMを聞く機会が増えたことが喜ばしい。原因は、アンテナの条件が変わったことである。

 これまでは、住区のアンテナで共同受信して、地上波のVHF・UHFとBSを各戸に再送信していた。地上デジタル放送が開始されたときに、CATV会社のJCN千葉が各戸にCATVを引き込むサービスを提供してくれた。VHF・UHF・BS・CS・地上デジタル放送の視聴が出来るようになった。

 セットトップボックスを購入またはレンタルするとCATVのチャンネルの受信を、ケーブルモデムをレンタルすれば、インターネットのサービスを受けられるようになった。

サンスイ TU-777 外観



サンスイ TU-777 正面

 住区としては、各戸への再送信用の機器と配線(同軸ケーブル)のメンテナンスや更新の手間がなくて済むのでありがたいことである。

 我が家でも、すべての放送を受信できるようになり、地上デジタル放送も問題なく受信できるようになった。映像関係の受信のための準備とチャンネル設定などを終了した後で、チューナーの電源を入れてFM放送を聴いて驚いた。また、チューニングメーターの針の振れが格段によくなっていることに気がついた。
 これまでは目立っていたマルチプレックスノイズ(2チャンネルに分離するときに発生する雑音:SN比に大きく関係する)がほとんど感じられない状態になっていた。

 JCN千葉へ電話して、再送信の際に変換されている周波数を教えてもらった。NHKFMの東京と千葉はもちろん、民放のチャンネルも良好な状態で受信できるようになった。そして、降雨時に極端に受信状態が悪くなる状況が改善されたことも喜ばしい。いつも音が出ている私の部屋での視聴も改善されており、降雨時には、リビングよりもこちらでの恩恵が大きい。

 「FMは、ディスク、テープに比べて音が悪いという方々にぜひお勧めしたいチューナーで、新しい機構を取り入れ、雑音と歪を徹底的に追求した製品です。シャープなチューニングと、音質をお楽しみください。」と、当時のカタログに書いてある。ここで言うディスクとはアナログのレコードのことで、CDではない。40年経って、サンスイの当時の技術者たちの願いが我が家で実現している。

 現在リビングルームに生き残っているオーディオ機器はいずれも骨董品の部類であり、いずれも最高級品ではない。このチューナーが接続されているメインアンプは、ラックスのキッド《A3500》。知人のOさんが組み立てたもので、パソコンの自作に興味が移ったと言って譲ってくれた。夏場に長時間聴いていると、真空管の熱が心配になる。

 長期間なじんだ山水のプリメインアンプ《AU-111(1966年購入:メイン部は真空管)》は天袋の奥にあり、プリアンプ部は壊れているが、メインアンプ部はまだ健在のはずである。
 山水のほうが馬力はあるが、ラックスのほうが音のヌケがいいので、《A3500》が我が家の定位置を占めている。ラックス《A3500》がダウンすると《AU-111》が再登場することになるかも知れない。

 現在は、チューナーとメインアンプの間に、プリアンプ《A2012(Oさんの自作)》と ティアックのテープレコーダー《V-1RX(1982年購入)》が接続してある。プリアンプ《A2012》は電源を入れないで、スイッチングボックスとして使用し、テープレコーダー《V-1RX》は、ボリューム代わりの役割を果たしている。チューナーの前面にボリュームがないためであり、メインアンプのボリュームを頻繁に使うのを避けることが出来ている。
 プリアンプに接続しているが、チューナーもCDプレーヤー《ヤマハ CD-2000W(1985年購入)》も同じく、ダイレクトにメインアンプにつないでいることになる。

 スピーカーやアナログプレーヤーについては、龍のコンサート三昧(第5回)やメルマガIDN第82号にも書いているので省略する。

チューナー テープレコーダー
プリアンプ
VTR(新規)
CDプレーヤー
メインアンプ

 以下は余談であるが、黒澤明監督の映画全30本のシリーズをNHKで放映したなかで、《天国と地獄》を見たときに、久しぶりに三橋達也を見て思い出した。彼は相当のオーディオマニアであり、高級品を買い集めてシステムを構成していた。
 あるとき、「大枚をつぎ込んでそろえた装置から出てくる音を、女房(安西響子のこと)は聞こえるのに、俺には聞こえないことがあるんだ」と嘆くのを聞いた(何かで読んだ?)ことがある。

 私の聴力も急速に低下しつつあり、オーディオ機器の性能や音質を云々する資格はないことを自覚している。ウイーンフィルやベルリンフィルを聴くのは今しかないと、ヨーロッパのコンサートへ出かけるのは、このような焦燥感みたいのがあるからだが、今後は体力と資金とも相談しなくてはならない。

 カメラやAV機器や時計について、どうして古いものにこだわるのか、自分でもよくわからない。新しいものを探すのが面倒なこともあるが、若い頃から長期間なじんできた機器たちをおろそかに出来ない気持ちが強いことは確かである。【

龍のコンサート三昧 アラカルト

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