編集後記集
【メルマガIDN 第185号 091215】

唐津と有田2009 【その5】有田にある佐賀県立九州陶磁文化館で伊万里を見た
 
有田ポーセリングパークのツヴィンガー宮殿を後にして、佐賀県立九州陶磁文化館へ行った。まず3階のカフェテラスで昼食をとり、入り口近くにある《有田焼からくりオルゴール時計》などを見てから、学芸員の方に全ての展示室を案内してもらった。ここでは、写真撮影が許されているので、龍の絵柄の磁器を写真に収めた。


佐賀県立九州陶磁文化館




1位に選ばれた 染付鷺文三足大皿
(国の重要文化財)
佐賀県立九州陶磁文化館
 佐賀県立九州陶磁文化館のホームページには、施設の目的として以下のことが記されているので、この施設の紹介にかえることとする。
 「佐賀県立九州陶磁文化館は肥前の陶磁器をはじめ、九州各地の陶磁器
に関し、その文化遺産の保存と陶芸文化の発展に寄与するため、歴史的・美術的・産業的に重要な資料を収集・保存・展示し、あわせて調査研究や教育普及の活動を行うことを目的として設立されました。従って当館は、九州の陶磁器専門の施設として、陶芸文化に関する総合的拠点となることを目指し、また国際的な交流を積極的に図れるよう努力しています。」

私が選んだ九州のやきもの(第1~第3展示室)
 私が訪れたときに、常設特別展示《私が選んだ九州のやきもの(2009年9月18日~10月25日)》が開催されていた。これは、公募で展示品を決めた参加型展覧会で、江戸時代の肥前陶磁器を中心に284点が展示されていた。
 特別展は、来年に開館30周年を迎えるプレイベントとして企画されたもの。2009年4月末より2ヶ月間、図録に掲載されている約6000点に対して人気投票を行った。インターネットでも受け付けて、投票総数は265人だった。

 私が選んだベスト30では、鍋島が12点でトップ、古伊万里が11点、唐津が3位で3点選ばれている。
 1位に選ばれたものは、国内磁器最高峰とされる鍋島藩窯の《染付鷺文三足大皿(1690~1720年代 国重要文化財)》である。 

 2009年7月14日~9月6日に東博(東京国立博物館)の平成館で開催された特別展《染付-藍が彩るアジアの器」》では《染付蓮鷺文(れんろもん)三足皿》と表示されていた。
 磁器には決められた名前はなく、東博では絵付けの蓮にも着目して、《蓮鷺文》としたそうである。ちなみに、国の重要文化財としての名称は、皿ではなく鉢になっている。
 9月6日に東博での展覧会が終了し、18日からの有田での展覧会に返却が間に合わないで、有田での初日は写真の展示だったとのこと。これらのことは、後日電話で学芸員の家田さんに教えてもらった。

 30位以下に選ばれたものは、佐賀のやきもの、九州各地等のやきもの、海外のやきもの、近・現代のやきものに区分・整理して展示されていた。
 龍の絵柄のものとしては、《色絵赤玉雲龍紋鉢(ベスト第25位)》、《色絵龍虎文輪花皿(ベスト第55位)》、《色絵団龍花唐草文 十角小皿(ベスト第55位)》、館選品として、中国・景徳鎮窯の《白磁龍船(18~19世紀 清朝)》が展示されていた。

蒲原コレクション(第4展示室)

蒲原コレクションの展示



柴田夫妻コレクション 染付 雲龍紋 大皿


柴田夫妻コレクション 色絵 龍花唐草文 皿

 蒲原コレクションは、有田町名誉町民の故蒲原 権(かもはら はかる)氏(1896~1987)が1974年秋にヨーロッパ各地を巡り、私財を投じて蒐集したもの。コレクションは、1978年に有田町に寄贈され、その後1980に九州陶磁文化館が開館したことに伴い、町から当館に寄託を受けた。

 展示作品は101点で、17世紀後半から18世紀前半の輸出用古伊万里が主なもの。ヨーロッパの王侯貴族に好まれた肥前磁器の華麗さを今に伝えている。金具はヨーロッパで取り付けられたものであり、調味料セットには酢や油を意味するアルファベットの文字が描かれており、オランダ東インド会社の商号であるVOCのマーク入りの皿も見ることが出来る。

 蒲原氏は陶磁器の蒐集に情熱を傾けられただけではなく、文化財保護行政にも携わり、有田町文化財保護審議会委員として、天狗谷窯、掛の谷窯、猿川窯、山辺田窯などの窯跡の調査にも尽力された。

柴田夫妻コレクション(第5展示室)
 九州陶磁文化館の圧巻は、柴田明彦・祐子夫妻により寄贈された一大コレクションである。1990年から2003年までの14年間に、19回にわたって合わせて10,311点が寄贈された。

 柴田明彦氏は昭和15年東京に生まれ、大学を卒業し食品会社を経営。20代から有田焼にひかれ、江戸時代の有田焼の歴史的な変遷と、消費地の生活文化の歴史を照合しながら体系的に収集を行った。
 柴田祐子氏は、昭和19年東京に生まれ、大学を卒業の同年柴田明彦氏と結婚。貿易会社を経営。10代より古美術にひかれ、江戸時代の有田焼の小品を収集した。

 このコレクションの特徴は、江戸時代の17、18世紀に作られた有田磁器の歴史的変遷がわかるように、様々な種類の作品がそろえられていること。いいくつかのテーマを設け、有田磁器の各年代の様式の特徴、技術の変化などを紹介している。
 2006年には、有田の磁器を網羅的・体系的に収集した磁器のコレクションで、世界的に見ても類例が無く、学術的にも極めて貴重な資料として認められ、国の《登録有形文化財(工芸部門第1号)》に指定された。
 寄贈された10,311点の中から、毎年12月に作品の展示替えが行なわれ、約1,000点が展示されている。

エピローグ
 案内してくれた学芸員の方は、柴田夫妻コレクションのすべてを見るために10年間は通ってくださいと言われた。
 柴田夫妻コレクションについては、中国磁器や肥前以外の産地の可能性が高いものを除いた4,177件10,011点について、年代・器種・種類・形象の優先順で並べた総目録が作られている。総目録からは、柴田夫妻コレクションを披露した8回の展覧会図録と関連付けられており、各回の図録に掲載された写真を見ることが出来るようになっている。これも学芸員の方の説明。

 最近、編集後記をカテゴリー別に整理した。そのインデックスを見ると、実にいろんなところで《伊万里》を見たことがわかる。知永古美術館・戸栗美術館・松岡美術館・東京国立博物館・松涛美術館・出光美術館・有田ポーセリングパーク、九州陶磁文化館など。いずれもがテーマを定めて展示されていた。
 海外では、シャーロッテンブルク宮殿(ベルリン)・ツヴィンガー宮殿(ドレスデン)などまで足を伸ばしている。《伊万里》を見飽きるということはない。

唐津と有田2009より写真をこちらよりご覧ください
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