今年は辰年。昨年(2011年)の10月のふれあい充電講演会において《龍の謂れとかたち》と題してお話する機会があった。同じ題でホームページを創り始めて5年半が経過している。これまでは、私が出会った龍と仲間たちを取り上げてきた。講演の準備の段階で、これまで怠ってきた龍について勉強をした。 また、辰年を目前にひかえた昨年の末には、町を歩いても龍グッズがあふれている感がある。龍に関わる催しもいくつか見られる。国立歴史民俗博物館の《たつ年の龍》や江戸東京博物館の《歴史の中の龍》は、規模は大きくないが、それぞれの博物館で所有している龍に関わる自慢の品を展示している風情があり、興味深いものがある。また、両博物館では《第81回歴博フォーラム「新春 たつ」》や《ミュージアムトーク》などが計画されている。 このような体験も交えながら、これまでに知りえた龍についての知識や集めた資料の中より今回は《三停九似説》をもとに龍のかたちの特徴について紹介する。 三停九似説 中国で龍のイメージができあがったのは、後漢の王符による《九似説》と宋の羅願曾の《三停説》を合わせた《三停九似説》に基づいているといわれる。 《三停》とは龍のプロポーションについて、首から腕の付け根、腕の付け根から腰、腰から尾までの三つの部分の長さがそれぞれ等しいことを意味している。これは、天上、海中、地底の三界に通じるとされる。 《九似》とは、龍の九つの部位がそれぞれ他の動物に似ていることを言う。角は鹿、耳は牛、頭は駝(駱駝)、目は兎、鱗は鯉、爪は鷹、掌(たなごころ)は虎、腹は蜃(蛟:みずち)、項(うなじ)は蛇に似ているということであり、龍を描く時にはこの《三停九似説》に則り描かれるという。 また、龍のかたちには下記の特徴があると言われている。 ・背中に81枚の鱗がある ・口のそばに髯髭が生えている ・喉の下に逆鱗(げきりん:逆さに生えた)鱗がある ・声は銅盤(銅製のたらい)を打った時の音に似ている ・顎の下に輝く珠がある ・頭の上に山の形をした博山(はくさん 尺木(せきぼく)ともいう)がある 三停九似説や龍の特徴は、人間の創造力のなせる技ではあるが、龍はあらゆる動物の祖であり、あらゆる動物の頂点に君臨するものとして、最高の瑞祥とあがめられている所以である。
エピローグ 最近、《龍の謂れとかたちのブログ》を立ち上げ、ホームページ《龍の謂れとかたち》にリンクを貼っている。これは、新宿区より《町会・自治会のためのブログ入門講座》をIDNが受託することになり、自から制作を体験してみようと思って始めたものである。ブログに書き込みがあり、ホームページを見た人からメールがくるようになった。 「年賀状の写真スポットを探していて、貴HPにたどりつきました。自分の近所にも龍がいることがわかり、早速訪れてみたいと思いました(後略)」、「2012年の年賀状作成に際し、龍モチーフのある場所で写真撮影をしたいと探していたところ、《龍の謂れとかたち》のHPにたどり着きました。大変参考になりました。(中略)私の家の近所にも龍の像はあるのですが、ぜひ一度ご覧になってみてください。」と、龍のありかを教えてもらったりしている。 IDNの方や知人からもお土産を頂いたり、龍情報教えてもらっては出かけてゆき、写真を撮り、謂れを調べてホームページにアップすることも多い。私のホームページは、私だけのものでなく、皆さんの協力により内容が充実している。 図中に出展として示した『本草綱目(ほんぞうこうもく)』は、中国の代表的な本草書(52巻)。著者は明の李時珍。本草1890余種の漢薬について解説した書。1578年に成り、1996年にわが国でも版行されたもの。【生部 圭助】 |