テレビ60年 未来へつなぐ
【メルマガIDN編集後記 第271号 130801】


シンポジウムのパンフレット


千代田放送会館前の看板


 毎年春に《NHK放送文化研究所 研究発表とシンポジウム》が開催されている。今年(2013年)も、千代田放送会館で3月に《テレビ60年 未来へつなぐ》という命題で開催された。
 3日間にわたる開催の中で、3日目の研究発表《テレビ60年を迎えた視聴者の現在~広がる“カスタマイズ”視聴と“つながり”視聴~》とシンポジウム《ソーシャルパワーがテレビを変える》を聴講した。

テレビ60年を迎えた視聴者の現在
  ~広がる“カスタマイズ”視聴と“つながり”視聴~
 NHK放送文化研究所では、1982年の「テレビ30年調査」から10年ごとに全国世論調査を実施している。
 2012年の「テレビ60年調査」では、時系列でテレビ視聴の長期変化をとらえること、この10年で大きく変化したメディア環境がテレビ視聴にどう影響しているかを目的に調査を行った。

 リアルタイム視聴の《量》としては、1970年代前半まで順調に伸び、1985年前後に減少が見られたが、2000年以降は多少の増減はあるものの、2012年の調査では3時間40分と長時間で安定しているという調査結果となっている。

 2012年の調査では、《カスタマイズ視聴》と《つながり視聴》という2つの視聴スタイルに焦点を当て、現代の視聴者の姿を明らかにしようとした。
 《カスタマイズ視聴》とは、テレビ局の編成にとらわれず、自分の好きな時に録画した番組を見たり、インターネットでテレビ番組の動画を見たりする様な視聴スタイル。

 《つながり視聴》とは、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)でテレビに関する情報や感想を読み書きしたり、家族間のコミュニケーションを楽しむツールとしてテレビを利用するなど、人とのつながりを大切にするような視聴スタイル。

 調査の具体的な内容については省略するが、現代のテレビ視聴は、「二つの視聴スタイルを両立させ、自由自在にテレビを楽しむ《自分流》視聴」と結論づけている。

シンポジウム:ソーシャルパワーがテレビを変える
 シンポジウムは、前述の《つながり視聴》の「SNSでテレビに関する情報や感想を読み書き」の範疇に位置づけられる。

 本シンポジウムでは、SNSの普及などで個人が情報を発信・共有・拡散することをソーシャルパワーと名付け、それがテレビメディアやテレビ局にどんな影響をもたらすのかについて議論された。

 本シンポジウムには、パネリストとして、桑原 知久氏(NHK編成局 編成主幹)、若井 真介氏(日本テレビ編成局メディアデザインセンター長)、杉本 誠司氏(株式会社ニワンゴ 代表取締役社長)、鈴木 謙介氏(関西学院大学 准教授)が登場し、司会を塩田 幸司氏(NHK放送文化研究所 部長)が務めた。

 テレビ局のパネリストからは、リアルタイムでテレビを視聴してもらうためSNS活用に積極的に取り組んでいる事例として、NHKのNEWS WEB(夜11時半)、日本テレビとNHKとがテレビ60年の特集番組のために開発した《60番勝負》では、スマホより1970万回の《イィボタン》が押されたことなどが報告された。

 シンポジウムのパート1の《模索するテレビ局》に続いて、パート2の《テレビとSNSの実態》の冒頭で、NHK放送文化研究所メディア研究部の小川浩司氏より『テレビ×SNSの実態調査』の結果の概要が発表された。
 この実態調査では、世論調査、ウェブ調査、MROC(オンライン・グループ・インタビュー)の3つが実施されている世論調査(個人面接法)とウェブ調査の内容の一部を下記に紹介する。なお、本調査ではSNSとしてmixi、Facebook、Twitter、LINEなどを想定している。

テレビ視聴中のSNS利用の実態(ウェブ調査による)
調査項目 母数 調査結果
テレビ視聴とSNS利用が週に一日以上で
週に一日以上SNSを利用する人
4124 週に一日以上SNSを利用する人:49.4%(2028人)
SNSを通じてテレビについて書いたり、クイズに参加した経験者:13%
週に一日以上SNSを利用する人のうち
TVの視聴中にTV番組と関連ある読み書きをしている人
2028 全体(36%)  16~19歳(参考値67%)・20~24歳(59%)・
25~29歳(37%)・30~49歳(33~31%)・ 50~59歳(25~24%)
「世論調査(個人面接法 母数1430名)」によれば、週に1日以上のSNS利用者は、16歳以上の男女の22%である。
TVに関連した情報を読み書きする者の比率は8%である。書き込みまでする人は3%である。

 ウェブ調査結果で、テレビを見ながらSNSを利用する者の中で、TVに関連した情報をやり取りしている人が36%もあるが、全体の比率では、18%に相当する。ウェブ調査の母集団の方が個人面接法の母集団より10%多くの人がSNSを利用しており、両者に差があることをを理解したい。

 「世論調査(個人面接法 母数1430名)」によれば、週に1日以上のSNS利用者は、16歳以上の男女の22%であるが、TVに関連した情報を活用する人の比率は8%であり、書き込みまでする人は3%である。

 テレビについて書いてくれている人が多いのに驚いた(若井氏)、TVを視聴しながらSNSを利用する者は24歳までと25歳以上の落差がある(杉本氏)、ネットにおいて行動するコアターゲット層は1割であり、若年層は3割(鈴木氏)、ニコニコ動画ユーザーの年代別統計では40代までが8~9割を占める(杉本氏)、人口比率は40歳以上が7割(杉本氏)。

 このような実態を把握したうえで、パート3の《ソーシャルパワーとどう向き合うか》について議論がされた。調査結果の数字から読み取れるのは、テレビとSNSを組み合わせたソ-シャル視聴について論じるのは、若者がターゲットであることは明らかである。では、残りの中高年齢者については、どのような仕掛けをすれば、SNSを活用してテレビ視聴の向上に貢献してくれるであろうか。また、今回はデータがなかった男女別での実態の把握も必要であろう。議論を聴いていてこのようなことを感じた。

エピローグ

 私が参加したシンポジウム《ソーシャルパワーがテレビを変える》では、新しく台頭してきたSNSを利用して、視聴者の拡大(視聴率の向上)を図りたいという意図が透けて見える。現状はデータに見る通り、SNSの利用がテレビの視聴にうまく循環しているとは言えない。
 テレビとSNSを組み合わせたソ-シャル視聴が今後の新たな視聴スタイルとして拡がってゆくかについては、《(次世代)スマートテレビ》の登場なども視野に入れて、テレビを巻き込んだメディアの融合と新たな展開を見守ることが必要だと思う。【生部圭助】

<参考とした資料>
・シンポジウムの当日に配布された資料
・NHK放送文化研究所 『放送研究と調査(2013-7)』

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