最近《スマート》と名付けられたが言葉が多く見られる。その例としては、スマートフォン、スマートテレビ、スマートハウス、ケーブルスマートホーム,スマートシティ、スマートコミュニティ、総務省のスマートプラチナ社会、など数えればきりがない。今回はこれらに《スマートシニア》というキーワードを加えて、スマートの意味や、シニアとスマートについて考えてみたい。
スマートという言葉との出会い 1986年に、会社の先輩や同僚と共に『インテリジェントビル』という本を日本経済新聞社より上梓した。この前後の1982年には、オフィスの情報化についての調査に、1990年には、オフィスにおけるファシリティサービスなどについて某社との打ち合わせのために米国へ行った。 日本では当時、《インテリジェント》という言葉を使っていたが、ダラス、ヒューストン、ニューヨークなどで対応してくれた方たちは、《スマートビル》とか《スマートオフィス》という言葉を使っていた。 彼らが使っている《スマート》という言葉の意味を尋ねたら、「インテイジェントはcleverに相当し、利口とか器用を意味する、スマートはwiseに相当し、賢いという意味、またカッコイイという意味もある」という回答を得て妙に納得した記憶がある。 スマートシニアというコンセプト では、《スマートシニア》という言葉はいつ生まれたのであろうか。村田裕之氏が、「1999年9月15日の朝日新聞で、ネットの時代の新たな高齢者像である《スマートシニア》というコンセプトを提唱した」と言っている。後日談としては、「ネットを縦横に活用して情報収集し、積極的な消費行動を取る先進的な高齢者」のこと、とも言っている。 それ以前にアメリカでは、ネットを縦横に活用して情報収集し、積極的な消費行動をとる、下記の特徴を有する先進的な高齢者を《スマートシニア》と呼んだそうである。 ・日に一度、毎週10時間以上ネットを使う ・若い世代よりネット通販に積極的である ・市場で自分の声を積極的に発信する アメリカの例や村田裕之氏の提唱は、商品やサービスの提供者である企業は、ICTを駆使して賢くなる消費者としてのシニアよりもさらに賢くならなければいけない、という意味を《スマートシニア》に込めている。 2012年6月1日に、聖路加国際病院の日野原理事長が主宰されている《新老人の会》の新しい組織として、《スマートシニア・アソシエーション SmartSenior Association(SSA)》のホームページ並びにフェイスブックページが開設されている。ここでは、スマートシニアを「賢く洗練されITに通じたシニア」と定義している。
スマートシニアを、高齢者、ICT、カッコいいを3つのキーワードとし、スマートシニアに求められる資質を考えてみた。 私はスマートというコンセプトには、「ICTを利用した買い物上手」ということだけでなく、もっと広い意味を持たせたいと思う。 社会システムとしてシニアを支援するICT(総務省のスマートプラチナ社会など)を活用して自身の安全や健康を保持する、生活の利便性を向上させる、自己実現を図る、コミュニティに参加意識を持つなど、スマートシニアに求められる10の資質をあげた。(右の上の表を参照) スマートシニアを支えるツールとしてのICT シニアがスマートであるためには、どのようなICTを活用することが有効であろうか。まず日本経新聞社が毎年行っているシニアのICT利用の実態を調査した結果を紹介する。 <第2回ネットライフ1万人調査:日本経新聞社の調査> 日本経済新聞社の『第2回ネットライフ1万人調査』の結果が2013年10月23日の紙上で報告された。 調査は9月20日~26日にネット経由で実施され、全国の16~80歳の男女10,0348人から回答を得た。この調査はネットによるもので、国民全体の実態を示していないことは念頭に置くべきだが、いくつかのデータを記す。 シニアがネットを利用する端末はパソコンが中心。シニアのスマホの所有者は14%(全体では39%)、タブレットの所有者は11%(全体では15%)である。 平日のパソコン経由のネット利用は、2時間41分と全体平均より30分長い。また、スマホ・タブレットの所有者に限って見ると、スマホ・タブレットを通じてネットの利用時間は10代、20代に次ぐ長さとなっている。 60歳以上では、生鮮や加工品などの《食料品》の購入者の53%(全体より6%多い)、《IT関連製品》の購入者の54%(全体より3%多い)が通販を利用している。調査した17分野では、医薬品やサプリメント、レンタルサービスでシニアの購入比率がトップだった。 <スマートシニアを支えるツールとしてのICT> ネットライフ1万人調査で、回答した人が利用したのはパソコンとのこと(調査を担当した日経リサーチに確認)。調査結果で、シニアのタブレットやスマホの所有率はそんなに高いとは言えない。 シニアがICTに期待するのは、安心と健康を保つ、体力の減退や自立度の劣化を軽減してくれる、情報を得る、情報を発信する、コミュニケーションの支援、など多岐にわたる。 このようなシニアの要請に応えるのに有用なのはパソコンかタブレットやスマホか、ということに興味があり議論もしている。シニアにとっては、パソコンよりタブレットのほうがなじむのではないかとも言われている。 パソコンは、ビジネスにおいては必須で、シニアにとっても文書を作成する場合に必要となる。しかし、タブレットの中にも文書作成などのアプリを提供するするようになれば、シニアにとってタブレットの優位性がさらに高まるのではないだろうか。例えば、アップルがiPad向けの文書作成、表計算、プレゼンテーションのソフトを無料で提供することを決めたことが公表されている。 エピローグ:アドバイザーこそスマートシニアであり、シニアをスマートにする役割を担う 2008年から2012年までの5年間にIDNでシニア情報生活ドバイザー資格認定取得者(103名)の受講申請書より、アドバイザー講座の受講動機をまとめた結果を示す。(右の下の表を参照) アドバイザー講座の受講希望者の意識の高さをあらためて感じた次第である。 シニア情報生活アドバイザーはシニアがスマートになることを支援し、助言をする役割を担う。そのためにはアドバイザー自らがスマートになるように心がけることが大切である。このように自戒の念を込めながら「シニア情報生活アドバイザーこそがスマートシニアである」とキャンペーンを行いたいと考えている。 編集後記集 |