鳥たちのご馳走
【メルマガIDN編集後記 第293号 140701】

鳥たちのご馳走

大きい鳥がやってきて鋭いくちばしで啄む


大きい鳥がいない時をねらって小さい鳥がやってきた


残りは俺のものだ! 他を寄せ付けないぞとにらみを利かせる奴もいる


実が残り少なくなると、小さな鳥も大きな鳥を怖がらずに近づいてくる

パソコンのディスプレイの先の窓の向こうに枇杷の木がある
毎年黄色い枇杷の実がたわわに実る
枇杷の実が熟すころを待っていたように鳥たちがやってくる

たくさんの鳥たちで木の中がざわめく
熟した枇杷の実をついばむ鳥たち
パソコン操作で疲れた目と手を癒してくれる

この枇杷の木は葉っぱが大きく実は小粒だ
たわわに実って黄色く熟した枇杷の実
枇杷の実は日当りのいい梢にたくさんなっている

大きい鳥がやってきて鋭いくちばしで啄む
落ち着いて一つの実を最後まで食べることはしない
食べ残しの実をほかの鳥がやってきて食べる

カラスは実を銜えて持ち去る
何処かでゆっくり食べるのか
何処かで子供が待っているのであろうか

梅雨どきのある晴れた日
大きい鳥がいない時をねらって小さい鳥がやってきた
目の周りが白く羽は葉の色に似ている
木の葉がざわざわと揺れているが姿が見えない
そのうちに日の当たるところに現れる
小さい鳥は身の丈のほどもある枇杷の実を啄む

窓越しにカメラを構える
鳥たちは写真を撮っているのに気が付かない
シャッター音か人の気配に気が付く
一羽が飛び立つと皆が習う

そしてまたしばらくしてやってくる
鳥たちがつがいで来ることはないようだ

夕方になると鳥たちは何処かへ帰ってゆく
夜はどこで寝るのだろう

鳥たちがやってきてざわめきが始まって七日ほど
鳥たちのご馳走の枇杷の実も少なくなった
建物に近いところの枇杷の実が最後まで残る
人の近くを避けているのかな

残りは俺のものだ
他を寄せ付けないぞとにらみを利かせる奴もいる

琵琶の実が残り少なくなる
小さな鳥も大きな鳥を怖がらずに近づいてくる
皆がこれを最後とご馳走を夢中で啄んでいる

啄んでいるうちにポロリと実が落ちる
地面には落ちた枇杷の実がいっぱい
一日見ないと枇杷の実の数がぐっと減る

そして鳥たちがやってきて十日ほど過ぎ
枇杷の実はほとんどなくなった

食べ残しの茶色くなった枇杷の実を食べにくる鳥もいる
やがて鳥たちは来なくなり
窓の外に静けさが戻る
【生部圭助】

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