民芸品や郷土玩具の龍
【メルマガIDN編集後記 第313号 150501】

 龍楽者は、民芸品や郷土玩具を扱っているお店に寄ると龍に目が行って、買い求めることが多い。品物に同胞されている栞や説明書により、龍の謂れにはそれぞれ独特なものがあり、造られ方にも種々あることを知った。私のホームページ「龍の謂れとかたち」では、このジャンルについて、意図のない並べ方になっていたが、最近になって整理した。今回はこの整理法に従って、いくつかの龍を紹介する。

 
【1】十二支のつげ置物・辰       【2】開運干支木彫雲龍

 
【3】張子十二支玩具の辰      【4】仙台張子 十二支の辰

 
【5】はりこの龍             
【7】辰だるま・・・・・・・・


【6】薩摩(干支)首人形の龍

 
【8】大津絵十二支土鈴         【9】高山土人形の龍の土鈴

 

【10】木目込十二支の辰         【11】ちりめん十二支の辰

 
【12】まゆ十二支の辰    【13】平井 雅子の十二支の中の辰


【14】錦彩招福辰


木彫り:【1】十二支のつげ置物・辰 (別府つげ工芸)
 国産のつげで作られた十二支の中の龍。つげは成長が遅く、緻密で、硬く強く、耐久性が高く、古くから縁起物とされてきた。別府つげ工芸では、十二支のすべてをそろえている。同じ龍でも手作りなので、表情、サイズ、形状などが微妙に異なる。

木彫り:【2】開運干支木彫雲龍(雑司ヶ谷鬼子母神)

 鬼子母神は安産・子育(こやす)の神様として広く信仰の対象となっているが、信者・宗徒の外護神として崇められている。
 鬼子母神は、インドで訶梨帝母(カリテイモ)とよばれ、王舎城(オウシャジョウ)の夜叉神の娘。嫁して多くの子供を産んだが、その性質は暴虐きわまりない。お釈迦様は、その過ちから帝母を救うことを考えられ、その末の子を隠してし、嘆き悲しむ帝母を戒めた。そこで帝母ははじめて今までの過ちを悟り、お釈迦様に帰依した。

張子:【3】張子十二支玩具の辰(高橋張子虎本舗)
 出雲地方は古くから魔除けとして虎を飾る風習がある。郷土の荒川亀斉(きさい)が作った原型を明治10年に、当家の先々代高橋熊市が張子の首振りとし、色彩に工夫をこらして製作したのが起源とされる。土型の原型に和紙を原料に数枚を重ね張りして乾かし、原型を抜き取り、その上に胡粉、顔料などで彩色し仕上げたもの。十二支全部がユーモラスな張子の首振りで作られている。張子虎は1962年(寅年)に切手の図案に使われた。

張子:【4】仙台張子 十二支の辰 (たかはし はしめ工房)
 仙台張子は、藩政時代から伊達藩士の下級武士の手内職として作られていたが、明治以後一部を除いて廃絶、1921年に本郷徳治が数十年振りに復活させ、現在に至っている。自然のままの趣と豊かな色彩、素朴な形が優しい温もりを伝えるのが特徴。
 たかはし はしめ工房の張子は、1960年に新しいお土産品として首振り張子を製作。この時期から十二支の製作を始めた。手のひらに乗る小さなサイズであるが、すべての動物の首がゆれる。

はりこ:【5】はりこの龍(文二郎はりこ工房)
 文二郎はりこ工房は高山駅からは車で15分ほどのところにある。はりこは伝統の紙技が生み出す《一枚張り子・中芯仕立》。すべてが手造りのオリジナル、職人が手書きにより絵付けする。文二郎は和紙に伝えられる《和のこころ》を追求している。百年の歳月にも耐えられるとのこと。 
紙塑:【6】薩摩(干支)首人形の龍(鹿島たかし)
 和紙を水で溶かして糊で練り合わせて粘土状にしたものを、割り竹の先に固め、指先で表情を手捻りした紙塑人形。鹿児島に伝承される神話や民話を、一本一本手捻りによる独特な表情で遊びを通して子供に伝える。40年前に思い立って薩摩首人形つくりを続けてきた《鹿島たかし》は2007年に、最近亡くなった、と聞いた。

紙塑:【7】辰だるま(荒井だるま屋)
 干支とだるまの二つの縁起で福を2倍呼び込もうと、平塚だるまの荒井だるま屋(荒井星冠さん)が考案。荒井だるま屋は干支だるまを申年から造り始めて9年目の2012年に《辰だるま》を創作。木型に和紙を貼るところからすべて手作業で制作。手描きのあたたかさを大切に、ひとつひとつ心を込めて創っており、りりしい金色の角を持ちながらどこか優しげである。

土鈴:【8】大津絵十二支土鈴
 江戸初期、逢坂の関で名高い大津の大谷追分の町で生まれた民画に有名な大津絵がある。大津絵の画題から有名なものを十種《大津絵人形土鈴》として登場させた。高田 瞠は新しく《大津絵十二支土鈴》を創作し、新しい滋賀の代表的な郷土玩具となることを目指した。

土鈴:【9】高山土人形の龍の土鈴(2代目の岩光子)
 飛騨の伝統のやきもの、《山田焼》の発祥地である高山市山田町で生れた伝統的な焼き物の技を生かした土人形。初代の岩信成氏が名古屋や富山などの土人形から型を抜き取りして、それをもとに高山土人形の独特の型を作りだした。写真に示すものは、2代目の岩光子さんの作。素焼き前の人形を乾燥させ、近くの製材所などから分けてもらった木片をくべて、丸一日かけ焼き上げる。《山田の雛さま》は、現在、岩光子さんが唯一の作り手となっている。

木目込:【10】木目込十二支の辰
         (浅草橋 五色株式会社)

 原 孝洲は、昭和61年に、初代が作り上げた人形づくりの奥義《胡粉仕上げの技法(昭和41年に無形文化財に指定)》を研鑽し習得、二世を襲名、平成10年に雅号を原 孝洲に。原 孝洲は、どれだけ澄んだ気持ちでお人形のお顔を描けるかを大切にしている。木目込み人形の特徴は一番に顔のかわいらしさ、比較的小さいお人形が多く、場所をとらない、胴体が木製のため、衣装が型崩れせず、長持ちする。

生地:【11】ちりめん十二支の辰 (龍虎堂・リュウコドウ)
 綺麗なちりめん生地をまとった龍。京都の人形工房の老舗『龍虎堂』の手作り人形飾り。《龍虎堂》はミニチュア節句人形・干支置物・縁起物・ガラスや陶磁器工芸品・和紙工芸品・ちりめん和装小物などを扱っている。写真の《龍》は東京の明治座の3階売店で求めた。

まゆ:【12】まゆ十二支の辰(村田民芸工房)
 まゆ細工は、岩手県産の《まゆ》を材料として昭和40年頃に生まれた人形。盛岡の村田民芸工房の村田三樹二郎氏が創作した郷土玩具で、十二支の起き上がりや、まゆびな、こいのぼり等がある。《まゆ十二支》は昭和63年全国観光土産品推奨審査会で《日本観光協会会長賞》を受賞した。

陶製:【13】平井 雅子の十二支の中の辰
 平井 雅子は「製作にあたっては、涼しげな広がりのある作品を作りたいという気持ちを大切にしました。静止しているようで、じつは前方にも、後方にも、また、内から外へと開かれてゆく宇宙観のようなものが、十二の動物たちの穏やかな表情で、人々に伝えられたら幸せです」と言っている。

招福干支正月飾り:【14】錦彩招福辰(薬師窯)

 辰(龍)は勢い盛んで天にも昇る力を備えた聖なるものであり、古来より水を司る神や、瑞兆のシンボルとして広く崇められてきた。辰年を迎えるに当たり新年の招福を祈念し、縁起の良い床飾りがたくさん創作されている。ここに紹介するのは、恵林寺境内のお店に飾ってあるものを撮影させてもらった。

エピローグ
 私のホームページ《龍の謂れとかたち》では、民芸品や郷土玩具を24個、第303号(2014年12月1日発行)で紹介した印籠や煙草入れなど《粋な小物》を11個紹介している。ホームページで紹介しているものは、私が買い求めたもの、展示会や自治体のアンテナショップで撮影させてもらったもの等で構成している。これらは可愛くて愛らしいものであるが、それぞれの謂れを知ることで、より一層愛着がわいてくる。

民芸品や郷土玩具の龍はこちらよりご覧ください

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