龍を訪ねて京都へ (その1)天井の龍
【メルマガIDN編集後記 第314号 150515】

 2015(平成27)年にも4月29日から5月10日の間、春季京都非公開文化財特別公開が行われた。速報により19の寺社が公開されることを知った。以前から京都で見たいと思っていた龍リストと照合してみると、重なっている寺社がたくさんある。今回は1泊2日しか余裕がなかったので、かなりの強行軍で、初日に6箇所、2日目に5箇所の寺社を訪れた。訪れた11箇所は、龍リストの中から京都の中央部から西部に位置しており、東部については、またの機会を待つことにした。


【1】地主大権現(清水寺の地主神社):八方にらみの龍


【5】閑臥庵:龍の天井絵


【7】妙心寺(法堂天井):雲龍図  狩野探幽筆
写真は拝観時にいただいた資料(大型の写真)を複写したもの


【9】鹿王院(舎利殿):天蓋の龍



【10】天龍寺(法堂天井):雲龍図  加山又造筆
写真は雲龍図図集のチラシより複写したもの



【11】瀧尾神社(拝殿):天井の龍
天井絵
 京都にある臨済宗のお寺の天井に大きな龍の絵がある。龍は仏法を守護する存在として禅宗寺院の法堂の天井にしばしば描かれた。龍は《水の神》ともいわれ、寺社を火から守り、修行僧に仏法の教えの雨を降らせると考えられている。龍リストの中で、今回見ることができた天井の龍を紹介する。

【1】地主大権現(清水寺の地主神社):八方にらみの龍
 地主大権現は、昭和から平成になって、縁結びの神としてご神徳が全国に広がり、新聞、テレビ、雑誌にたびたび取り上げられたそうで、狭い境内は人でごった返していた。
 狩野元信によって描かれた《八方にらみの龍》は、本殿の向かいにある地主大権現のお堂の天井にある。ここでは、お堂に上がることの許可をもらって天井絵を撮影した。

【2】建仁寺(法堂天井):雲龍図
 建仁寺は、臨済宗建仁寺派大本山の寺院。山号を東山と号する。本尊は釈迦如来、開基は源頼家、開山は栄西である。建仁寺は京都五山の第3位に列せられている。
 建仁寺の法堂天井の《雲龍図》は、平成14年4月に建仁寺開創800年を慶讃して小泉淳作により描かれたものであり、108畳の大きさである。
 ここの雲龍図は、
2009年にも見せてもらったことがあり、撮影した写真と謂れを私のホームページ《龍の謂れとかたち》で紹介している。

【3】摩利支尊天堂(禅居庵):天井龍

 摩利支尊天堂は建仁寺塔頭の禅居庵の一部。ご本尊の摩利支尊天は陽炎を神格化したインドの軍神(女神)で、護身・得財・勝利などをつかさどり、日本では武士の守護神とされている。
禅居庵は建仁寺の勅使門を入ったところの左側にある。禅居庵の内部の写真撮影は許されていない。

【4】相国寺(法堂天井):蟠龍図
 相国寺は、臨済宗相国寺派大本山の寺、山号を萬年山(万年山)と称し、正式名称を萬年山相國承天禅寺という。本尊は釈迦如来、開基は足利義満、開山は夢窓疎石である。
 慶長10年(
1605)相国寺の法堂が五建された際、狩野光信によって画かれた《蟠龍図》は直径が12Mもある。法堂を修復した際に、円相内の蟠龍図は修復されてた後コーティングされてその全容を綺麗見ることが出来る。円相外に画かれていた雲は剥落したまになっている。堂内中央付近の指定された場所でで手をたたくと、天井に反響して音が返ってくるので、一名《鳴き龍》ともよばれる。相国寺の中はすべて写真撮影が禁止されている。

【5】閑臥庵:龍の天井絵
 江戸時代前期に後水尾法皇が王城鎮護のため貴船奥院より陰陽道最高とされる神鎮宅霊符神を勧請し、万福寺の千呆禅師を開山として寺としたのが始まり。本堂には龍の天井画やチベット密教の高僧により作られた珍しい《砂曼荼羅》などが拝観出来る。
 
閑臥庵では、社務所に案内を乞うて、拝観料を払うと、お堂の中を自由に拝観させてもらえる。

【6】大徳寺(法堂天井):蟠龍図
 大徳寺は臨済宗大徳寺派大本山である。山号は龍寶山。本尊は釈迦如来。開基は大燈国師宗峰妙超で、正中2年(
1325)に創立されている。
 《蟠龍図》は狩野探幽が35歳の時の筆。ゆるいドーム状になった天井に画かれた龍は《鳴き龍》と呼ばれ、地面の敷瓦の上で手を叩くと、天井の龍も共鳴して音をたてる。特別公開されている大徳寺の法堂では、アルバイトの学生さんが説明をしてくれるが、法堂内での回遊は制限されており、もちろん写真撮影も許されていない。

【7】妙心寺(法堂天井):雲龍図
 妙心寺は、臨済宗妙心寺派大本山の寺院。山号を正法山と称する。本尊は釈迦如来。開基は花園天皇。開山は関山慧玄(無相大師)。
 通称《八方にらみの龍》は、関山慧玄国師の300年忌を記念した法堂の建造にともない、8年の歳月を要して、狩野探幽が55歳のときに描きあげたとされる。
 雲龍図は直径12Mあり、龍の目は円相の中心に描かれているが、立つ位置、見る角度によって、龍の表情や動きが変化するので、通称《八方にらみの龍》と呼ばれる。妙心寺の法堂では時間を定めて堂内を案内し解説してくれる。
 この雲龍図はJRの
2007年夏のキャンペーン使われており、駅に大型のポスターが貼りだされた。《龍の謂れとかたち》を紹介している私のホームページに、ここに紹介する写真を新たに追加した。

【8】妙心寺(三門):天井絵
 禅宗寺院では、仏殿前の門のことを三門といい、空門・無相門・無作門(無願門)の3つの悟りの境地をあらわす三解脱門の略称で、ここを通って菩提の場に入るとされている。
 三門は特別公開の対象となっており、細い急な階段を、頭上の梁に頭を打たないように気を付けて上層のお堂に入る。
 慶長4年(
1599)に建立された三門の上層には円通大士(観音)と十六羅漢像が安置されており、天井には龍や天女が描かれている。

【9】鹿王院(舎利殿):天蓋の龍
 鹿王院は、3代将軍足利義満が建立した宝幢寺の塔頭だが、宝幢寺自身は失われてしまってこの鹿王院だけとなっている。鹿王院は嵯峨嵐山に位置するが、観光客は少なく静かなところ。舎利殿には、色彩豊かな龍が描かれた天蓋がある。

【10】天龍寺(法堂天井):雲龍図
 
天龍寺は、臨済宗天龍寺派大本山の寺院。山号は霊亀山。寺号は天龍資聖禅寺と称する。本尊は釈迦如来、開基は足利尊氏、開山は夢窓疎石である。足利将軍家と桓武天皇ゆかりの禅寺として京都五山の第一位とされてきた。
 平成9年に描かれた《八方にらみの龍》は加山又造の筆。直径9メートルの円周に添って移動すると龍のかたちは変化するが、どの位置に立っても龍の視線がこちらを向いているように見える。

【11】瀧尾神社(拝殿):天井の龍
 IRまたは京阪の東福寺駅のの近くにある瀧尾神社拝殿の天井に木彫りの龍の彫刻がある。体をくねらせた龍の全長は8メートルといわれている。「龍が夜な夜な川に水を飲みに行く」などのうわさが広がり、拝殿の天井に網をとりつけて龍を閉じ込めたそうだが、今は、網はなく自由に拝観が出来る。

エピローグ

 京都の龍リストにある、南禅寺、東福寺、知恩院、京都の東部に位置する金戒光明寺や永興寺などの天井絵を見るのは別の機会に期待することなった。
 臨済宗の禅寺の法堂の天井に描かれた龍の絵はどれも圧巻である。また、鹿王院の舎利殿の天蓋や瀧尾神社の彫刻は珍しく、興味深く見た。今回見た天井の龍たちの写真と謂れについては、私のホームページ《龍の謂れとかたち》で順次紹介する。

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