2016年7月20日にイイノカンファレンスセンター(東京都 飯野ビルディング)で開催された、内閣府主催の「平成28年度 高齢社会フォーラム in 東京」に参加した。例年のフォーラムの底流にある、全員参加型で地域社会活動の活性化を図る、シニアにフォーカスし、シニア自らが意識改革をし、シニアの可能性を探る試みなどに興味があり、フォーラムに毎年参加している。
私は、午前中の主催者の挨拶のあと「基調講演」に参加し、午後に同時並行で開催された3つの分科会のうち午前中と同じ主会場で開催された、「第1分科会」と、最後に全員が集まって行われた「全体総括」に参加した。 平成28年度のフォーラムの概要: 本年度は「多世代が共に輝く地域を創る」をメインテーマにフォーラムが開催された。その概要を下記に記す。
坂東眞理子氏の講演では、高齢社会をポジティブにとらえよう、人生の四ステージ(青春・朱夏・白秋・玄冬、学生期・家住期・林住期・遊行期)、女性と男性の人生後半期についての考えが述べられた。講演の後半は、シニアの暮らしの知恵としての7つの具体的戦略(おしゃれ・自律と自立・クリアな脳を持つ・地域社会とつながる・賢いお金持ち・良い人間関係・住居)が提言された。 <第1分科会「多世代交流のコミュニティ~高齢者と若者が共に安心して暮らせる住まいと地域社会を求めて~」> [1部]コーディネーター:袖井孝子氏(お茶の水女子大学名誉教授 高齢社会をよくする女性の会 副理事長) 第一分科会第1部では、最初に3名のパネリストよりのプレゼンテーションがあり、そのあと短時間のパネルディスカッションが行われた。 パネリストの近山恵子氏(一般社団法人コミュニティネットワーク協会副会長)からは、30年の経験をもとに高齢者が自立し協力して暮らすコミュニティを各地に展開するまちづくりの例が紹介された。 パネリストの白木里恵子氏(早稲田大学創造理工学部助教)からは、多様な人材が入れ代わりながら、ゆるやかに自主運営を続けるコレクティブハウス「かんかん森」の事例が紹介された。 パネリストの太田善朗氏(NPO法人ニッポン・アクティブライフ・クラブ元理事)からは、在職中の経験を生かして、子育て支援事業や保育園の第三者評価事業に携わっている例が紹介された。 「全体総括」で、袖井孝子氏は、世代間がもたれあうのではなく、それぞれの自立、価値観、ライフスタイルを尊重しながら緩やかにつながってゆくことの必要性を強調した。 [2部] コーディネーター:宮崎冴子氏(一般社団法人社会貢献推進機構 キャリア開発研究所所長) 第一分科会第2部では、会場の参加者を数人単位で13グループを編成し、参加者が日頃困っていることや解決策についてグループ討議を行ない、全てのグループのリーダーが、討議の結果を1~3分ほどの時間で発表した。 「全体総括」では、宮崎冴子氏より、ボランティアなどで培ってきた経験などをもとに、積極的に参加し、よかったなと感じ、次の世代に繋ぐ気持ちを持ってほしいとの発言があった。 <第2分科会「シニアは地方創生の担い手」 コーディネーター:松田 智生氏(三菱総合研究所 プラチナ社会研究センター 主席研究員・チーフプロデューサー)> 第2分科会では、4名のパネリストを迎えて、グループ討議も行なった。「全体総括」では、松田智生氏より、シニアは担い手であるとの逆転の発想、脱元気の出ない四字熟語、「世代」の視点をもつ、一歩踏み出す勇気を持ってほしい、との発言があった。 <第3分科会「カリスマな活動から地域それぞれの在り方を探る コーディネーター:澤岡詩野氏(ダイヤ高齢社会研究財団 主任研究員)> 第3分科会では、先駆的な取り組みを、地域特性や、もっている力に応じて自分たち流にアレンジして活動する3名の方をパネリストに迎えて、3つの事例をもとに議論を展開した。「全体総括」では澤岡詩野氏より、「わくわく、どきどき感」を持ってほしい、地道に進めてほしい、意識を変えて自ら進んでかかわる気持ちを持ってほしいとの発言があった。 内閣府の講演により定量的なデータを知る 本フォーラムでは毎年、内閣府高齢社会対策担当参事官の方より、最新の『高齢社会白書』ほかの概要の説明がある。ここで配布される資料は、高齢社会に関する定量的データを知るのに大変有効である。 今回示された資料の中より、2060年の人口統計と高齢化の状況を紹介すると、人口と高齢者数は減少するが、65歳以上の人口比(高齢化率)は上昇し、2.5人に一人が65歳以上、4人に一人が75歳以上になるとのデータが示されている。(以下に示すデータのカッコ内は2015年のデータ) ・人口:8,674万人(12,711万人) ・高齢者数(65歳以上):3,464万人(3,392万人) ・高齢化率(65歳以上):39.9%(26.7%) 今年度の資料の中には、介護を取り巻く現状、雇用・就労の状況などの紹介のあと、政府の取り組みとして、「高齢社会対策大綱」(平成24年9月7日閣議決定)の概要や、「平成28年度の高齢者雇用就業対策の体系」などが紹介されている。以下にその中よりいくつか紹介する。 ・50代までに行った老後の経済生活の備えについて、「なにもしていない」と回答する60歳以上の割合は約4割 ・日本の高齢者の77.5%は経済的に困っていない ・相談やお互いに世話する友人がいない人の割合は25.9% ・高齢者の約9割が老後の生活に満足している(内、まあ満足している割合は57.6%) ・60歳代で約3割、80歳以上で約2割の人が「働けるうちはいつまでも働きたい」と考えている エピローグ 「全体総括」の最後に、伊藤かおり氏(内閣府高齢社会対策担当参事官)より、後半期の人生は自分で作り上げるもの、自分から積極的に行動をとることが大切である、自分を取り巻く柔らかいネットワークづくりが望ましい、自分の団体に戻った後も、輝くコミュニティづくりに本日のフォーラムの成果を生かしてほしいと、まとめの言葉があり、閉会した。 なお、第2分科会と 第3分科会の概要、および伊藤かおり氏の発言については、同フォーラムのプログラムに記載されていた内容と、「全体総括」での発言(私のメモ)をもとに記した。私は第2分科会と第3分科会には参加していないことを付記しておく。 今年度から、このフォーラムを映像として残したいとの意向があり、NPO自立化支援ネットワーク(IDN)がその仕事を請け負った。主会場で行われた午前中の基調講演など、午後の部の第1分科会のフォーラムの様子を撮影し、10分ほどの映像作品に仕上げるために編集を行っている。【生部 圭助】 編集後記集へ |