妙法寺に棲む龍
【メルマガIDN編集後記 第346号 160915】

 自称龍楽者は龍との出会いを期待して寺社を訪れる。たくさんの龍が棲んでいる寺社の中でも妙法寺は際立っている。仁王門、祖師堂の向拝、唐破風の懸魚、扁額、手水舎、燈籠、額堂の絵馬、お守り、干支盃など豊富である。また、妙法寺には波の伊八(初代武志伊八郎信由)の若い頃から晩年に至る彫刻がたくさんあり、龍楽者にとって興味のある寺院である。
 妙法寺には、2011年の秋に訪れたが、1016年の夏に再訪して撮影した写真を加えてデジブックを制作した。(デジブック:ネットに公開するBGM付きのスライドショー、末尾にURLを示す)


妙法寺の境内 【拡大します


妙法寺の祖師堂


祖師堂の向拝の構成


祖師堂の唐破風の懸魚にある龍の彫刻 【拡大します



扁額 《感應法閣》と書かれている


手水舎の龍


妙法寺のお守り


干支盃(2012年の辰年)

日圓山妙法寺
 妙法寺(みょうほうじ)は、東京都杉並区堀ノ内にある日蓮宗の本山(由緒寺院)。山号は日圓山で寺号を妙法寺と称す。 《堀之内やくよけ祖師(おそっさん)》として、殊に厄除けのご利益があるとされ、江戸時代から多くの人々から信仰を集める寺院であり、現在でも、多くの人が参拝に訪れている。
 妙法寺の創建は、元和4年(
1618)と伝えられている。元々は真言宗の尼寺であったが、日圓上人により、後に日蓮宗に改宗。山号は日圓上人に因んでいる。当時は、目黒碑文谷の法華寺の末寺となったが、元禄12年(1699)3月に身延山の直末となった。元々は中本山であったが昭和27年に本山(由緒寺院)に昇格している。


仁王門(山門) 東京都指定有形文化財 昭和40年指定
 境内の南正面に建つ《仁王門》は、天明7(
1787)年の再建で、二層造りのため桜門とも呼ばれ、上層に廻縁をめぐらし、獅子・龍・華などの彫刻がほどこされている。
 門をくぐる時に上を見ると波間に猛ける龍の彫刻がある。彫刻は、伊八の師匠の嶋村丈衛門貞亮の作と言われている。

祖師堂 東京都指定有形文化財 昭和35年指定
 仁王門をくぐると、正面に見えるのが妙法寺で最も大きなお堂《祖師堂》である。祖師堂の正面の御簾の奥に日蓮上人の《祖師御尊像(やくよけ祖師像)》が安置されている。このやくよけ祖師像は《おそっさん》と呼ばれている。
 祖師堂には波の伊八(初代武志伊八郎信由)の若いころから晩年に至る彫刻がたくさん置かれている。

祖師堂の向拝にある龍の彫刻
 向拝とは、寺院建築・神社建築において、仏堂や社殿の屋根の中央が前方に張り出した部分のことをいう。妙法寺の向拝の正面と左右に、波の伊八の作による五体の龍の彫刻がおかれている。

祖師堂の唐破風の懸魚にある龍の彫刻
 唐破風屋根とは、先に紹介した向拝の屋根にも多く見られ、曲線状の装飾的につくられた屋根のことを言う。向拝の屋根の唐破風の先端の部分を《兎の毛通 (唐破風懸魚)》というが、ここにも波の伊八の作による龍の彫刻がある。ここに置かれている龍は《飛龍》である。

扁額
 正面階段を上げって内陣への入り口の上に扁額がある。扁額には《感應法閣》と書かれ、身延山七十四傳鐙 日鑑之の印がある。
 《感應》とは仏教用語で、仏様が人に働きかけ、それを人が受け止めることを意味する。《法閣》とは《おそっさん》の胎内であり、お参りした方と縁を結ぶと言うこと。《感應法閣》とは、境内(胎内)に足を踏み入れただけで(参拝しただけで)《おそっさま》と縁を結び、厄が払われると意味している。

手水舎の龍
 祖師堂の手前にある手水舎は、天明2(
1785)年、第十七世日研上人の時、渇水のために掘った井戸で、妙法寺の水屋といわれる。この井戸は、天明の当時から涸れることなく清水をたたえており、《天明の水》と呼ばれている。天明の水の吐水口の役割を果たしている龍のかたちは伸びやかで優雅である。

燈籠
 妙法寺の境内、祖師堂の前に二基の灯籠がある。二基の灯籠の構成は基本的には同じで、灯籠としては標準的なかたちをしている。この燈籠の笠の部分と中台に龍を見る。八角形の中台にある八体の龍のかたちは二つに大別されるが、同じタイプも微妙に異なっている。

額堂
 文化11年(
1814年)に建立されたとされる《額堂》は、仁王門を入った左手にある。額堂には、奉納された絵馬(額)が飾られている。ここはオープンスペースで、参拝者の休憩場所にもなっている。絵馬(額)の中で、龍が描かれたものが4つある。

干支盃
 妙法寺に初詣に行くと、その年の干支杯で屠蘇を頂いて邪気を払う。写真に示すものは、
2012年の辰年の干支盃である。

お守り
 妙法寺で求めたお守りは、龍の絵柄の表面と交通安全、開運・厄除けの文字がある裏面が合わさった、厚さが9mmほどの鈴になっている。

エピローグ
 妙法寺の堂内には入ることはできるが、写真の撮影は禁止されている。お堂内の天井や壁は金箔で覆われており、欄間には《松に孔雀》、《迦陵頻伽(仏教で極楽または雪山にいるという想像上の鳥)》の極彩色の彫物があり、彫工棟梁として、嶋村丈衛門(伊八の師匠)と武志伊八郎信由の銘がある。
 唐破風の軒先の懸魚にある飛龍の彫刻について。今回撮影した写真と5年前の
2011年に撮影した写真を並べて見て、汚れが進行していること、飛龍の左の髭がなくなっていることが分かった。伊八の貴重な作品の保存についても気になるところである。
【生部 圭助】


デジブック《妙法寺に棲む龍》は下記よりご覧ください
http://www.digibook.net/d/d304a7b7a08e3c8cb131bd7498f60f84/?m

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