シニアと収入が伴った仕事
【メルマガIDN編集後記 第356号 170215】

 IDNが2001年から実施している、シニア―情報生活アドバイザー講座の受講者は、かつて60歳を超えた方、60歳の退職を前に次のライフスステージの活動のひとつとしてアドバイザーを目指す方多かった。しかし、現在はこの年齢が5歳近く高齢の方にシフトしている。これは会社の雇用形態に大きく関連している。
 内閣府による高齢者の就労希望調査結果は最近よく見るテータであるが、65歳以上の人で「働けるうちはいつまでも」と希望する人が約72%にも達し、高齢者の働きたい意欲が大きいのは驚きである。
 IDNで活動されている方は、パソコンなどの教室の講師やアシスタントをされている方が多く、私はこれらの活動を《有償ボランティア》と位置付けている。しかし、IDNにおいても、収入を伴った仕事の場を求めている方も多いのではないか、と数年前から感じている。IDNでは、NPO、社会福祉法人、病院よりパソコンを教える業務の求人が2件あり、現在3件目が進行中で、アドバイザーの方に案内し、応募を受け付けている。今回はこれらの事例を紹介し、シニアと収入を伴った仕事について考えてみたい。


就労希望年齢 拡大します
【内閣府 高齢者の日常生活に関する意識調査 対象:全国60歳以上の男女】



ルーパスのパソコン訓練プログラム


パソコン講座の実施状況 講師は大旗 弘さん




社会福祉法人 本郷の森 銀杏企画

本郷の森のホームページより

■特定非営利活動法人 とらいあんぐる
            就労継続支援B型 ルーパス

 ルーパスは、主に精神障がいをお持ちの方に対する生活支援及び、就労支援を行っている社会復帰事業所である。募集の条件は下記の通り。
1.募集時期:2013年5月
2.勤務地:東京都墨田区
3.業務内容:精神障がい者に対するPC訓練、
         スタッフの支援補助業務
4.業務時間:週3日(月~金)、おおよそ9:00-16:00頃
5.待遇:1日8,000円(午前/午後のみ4,000円)、交通費実費
<講座の内容>
1.受講者:精神障がい者 ~10名程度
2.PC環境:(募集時期に明らかにしなかった)
3.パソコン講座の内容:通常のPC訓練に加えてPowerPointでのプレゼンテーション(プレゼンテーション能力と発表マナーの向上のための実践教育)
4.PC以外:社会人としてのマナーや社会性の教育及び、スタッフの支援補助業務、ルーパスのイベント(レクレーションなど)への積極的な参加

上記の内容で、アドバイザーの方々へダイレクトメールで案内したら、13名の方より応募と問い合わせがあった。PowerPointへの対応力が求められていること、採用された方はIDNへ入会を義務づけることを知らせた。定められた曜日、週に3回通うのは無理、PowerPointに自信がない、などの理由により結局6名の方が面接に臨んだ。面接の結果、大旗 弘さんの採用が決定して、2013年6月より勤務が始まり今日まで続いている。

■社会福祉法人 本郷の森 銀杏企画
 障害者自立支援法に伴い、就労継続B型と就労移行支援事業を行っている法人。このお話は、勤務を始めてから2年ほどたった大旗 弘さんより紹介があり、アドバイザーの皆さんにダイレクトメールで募集した。
1.募集時期:2015年4月
2.勤務地:東京都文京区本郷
3.業務内容:知的障碍者などの社会復帰・就業支援の訓練の一環としてパソコンを教える
4.業務時間:毎週金曜日の10:00頃~12:00
5.待遇:1回5,000円、交通費実費
<講座の内容>
1.受講者:知的障碍者、引きこもりの方、など 5名ほど
2.PC環境:OSはwindows7  
        アプリケーションはMicrosoft Office2013

3.講座の内容:初級者コースのワード・エクセル。ワードでシンプルな文章を打つ所まで出来、年賀状作りなどを経験。今後は、少し高度のワード文書の作成や簡単なエクセル操作等

 会員優先という条件を付け募集した。複数の応募者があった場合は是非銀杏企画の方で選考したいとの希望があり、5名の応募者のうち、2名が辞退し3名が面接を受けて、田村 徹さんに決定した。

■総武病院 デイケア
     (精神科に通院されている方のリハビリ施設)

 大旗 弘さんがパソコンの講師をしている、ルーパスの事業所長の齋藤隆彦さんより総武病院デイケアでパソコンを教える人を紹介してほしいとのメールがあった。デイケアのパソコン担当の方とも連絡し、下記の条件で、IDNのアドバイザーの方にダイレクトメールを送った。
1.募集時期:2017年2月
2.勤務地:千葉県船橋市市場
        (IR船橋駅徒歩15分 東船橋駅徒歩10分)
3.業務内容:精神障害者に対するPC講座
4.業務時間:毎週水曜日 9:30~11:30 
          終了後の打ち合わせ等、拘束は2時間
5.待遇:3,000円(2時間枠なので6,000円)、交通費実費
<PC講座について>
1.受講者:精神科に通院中の方。地域で生活されている方 
       平均して4人~8人くらい
  受講者に対して特別な配慮は必要ない。基本的なPC操作の出来る人
  基本的な操作練習が必要な方へはデイケアスタッフも2名がフォローする
2.PC環境:Windows7 ノートパソコン10台
3.講座の内容:Word、Excelを中心に、仕事で使えるテクニックを教える

 2017年2月14日に、IDNの正会員であること(新規入会も可)も条件として募集した結果、15日の夕方までに4名の応募があった。2月中に選定を終え、準備期間を置いて、4月より勤務してもらうことになっている。

■エピローグ
 2013年の6月に大旗さんの勤務が始まった直後に、勤務の時間帯に合わせて《ルーパス》を訪問した。齋藤所長の案内で、作業訓練プログラムとしての軽作業の様子を、そのあと、2階のPC教室で実施されていた《マナー・プレゼンテーション教育》を見せてもらった。
 本郷の森 銀杏企画についても、田村さんに決定した直後に、施設長の瀬川聖美さんと担当の金 真亜さんにお会いして、就労移行支援の教室を見せてもらった。
 今回紹介した内容は、いずれも求人のお話があった時点のことである。大旗さんと田村さんのその後の活動状況をIDNのアドバイザーの皆さんに紹介してもらいたいと以前から願っていた。2017年4月に予定している《第150回ふれあい充電講演会》で『(仮)ハンディキャップの方にパソコンを教える』と題してお2人にお話をうかがうことになっている。
 なお、今回は《収入が伴った仕事》として3つの例を示したが、収入よりも、ハンディキャップの方のお役に立ちたい、との気持ちを持って応募された方もあったことを特記しておきたい。【生部 圭助】

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