龍楽者にとって、東京国立博物館(東博)はたくさんの龍に出会える貴重な場所である。東博は1872年(明治5年)に創設された日本最古の博物館であり、東京都台東区の上野恩賜公園内にある。東博での展示件数は約3000件。ジャンルや素材によって、4週間から8週間ごとに、季節を考慮しながら作品の展示替えを行っているので、何回行っても新しい発見がある。
私は、毎年《博物館へ初もうで》をする。また、午後に時間がある時などにはカメラを持って東博へ足を運ぶ。東博のコレクションと寄託作品を中心とした《総合文化展》については、満70歳以上の者は、無料なので気楽に訪れることができる。 私のホームページ《龍の謂れとかたち》の中に置いた《サイバーギャラリー:東博の龍》では、2012年に開催された、140周年特集陳列《天翔ける龍2012》で展示された龍たちを中心に、《総合文化展》に展示された龍に謂れのある展示物を紹介している。
東博は、本館(日本ギャラリー)・東洋館(アジアギャラリー)・平成館・法隆寺宝物館(法隆寺献納宝物)・表慶館の5つの展示館及び資料館・黒田記念館・庭園・茶室などで構成されている。 東博の魅力は質・量ともに日本一の収蔵品にある。日本と東洋諸地域の考古遺物と美術作品で構成されるコレクションは総数約11万6000件、うち国宝88件、重文634件(2017年3月現在)。ジャンル、時代にわたって日本の美術を楽しむことができる博物館として、また、東洋諸地域の文化を概観できる博物館として位置づけられる。 博物館へ初もうで 新春には、東博で保有している自慢の品が展示される。2017年は、国宝に指定されている、《松林図屏風》、《扇面法華経冊子》、《古今和歌集 (元永本)上帖》などが特別公開された。 新年恒例となる《博物館に初もうで》も、2017年に14年目を迎え、《申》から始まった本企画は2周目に入っている。その年の干支にちなんだ特集が組まれ、今年の酉年には《博物館に初もうで 新年を寿ほぐ鳥たち》が本館2階の2つの室で開催された。 140周年特集陳列《天翔ける龍》 ~東博の《龍》のお宝が展示された~ 2012は辰年であり、1月2日(月)~1月29日(日)のあいだ《東京国立博物館140周年特集陳列 天翔ける龍》展が開催され、干支である辰、龍にちなんだ作品の数々が展示された。 第1展示室:龍と仏教・ 翼のある龍 応龍 第2展示室:龍のルーツ・五爪の龍・龍と一緒に描かれるもの 2012年には、140周年特集陳列《天翔ける龍2012》の開催を記念して、冊子『天翔ける龍』も発行され、この中に東博が所蔵する龍に謂れのある名品を見ることができる。 本館(日本ギャラリー) 1階は彫刻、陶磁、刀剣など、分野別展示と企画展示で構成されている。私は正面から右方向に向かい、時計と逆回りに展示物を見て回る。13室の漆器などの工芸品や民芸品、刀剣などをよく見る。 浅田次郎の『天切り松闇がたり』に出てくる、太刀の表の樋の中に倶利伽羅龍(くりからりゅう)を彫った《小龍景光》にもここで出会った。 2階は縄文時代から江戸時代まで、時代を追って展示する「日本美術の流れ」をたどる時代別の展示になっている。1階と同じに左回りで進むと東南の角に国宝室があり、ここの展示は見逃せない。5室と6室の武士の装いでは鎧や兜の龍を、西北の角の7室では屏風に描いた龍虎を、西南の角の9室では能衣装にあしらわれた龍の図柄を見て、写真に収めた。 東洋館(アジアギャラリー) 1968年(昭和43)に開館し、2013年1月にリニューアルオープンした東洋館では、「東洋美術をめぐる旅」をコンセプトに、中国・朝鮮半島・東南アジア・西域・インド・エジプトなどの美術と工芸、考古遺物が展示されている。私は中国や朝鮮半島の龍をあしらった陶磁器や工芸品を求めて3階と5階に足を踏み入れる。企画展で展示されたものが、こちらで常設展示されることもあり、見逃したものや写真の撮り直しにも便利である。 平成館 平成館は、皇太子徳仁親王(浩宮)の成婚を記念して平成11年(1999)に開館、2015年に考古展示室がリニューアルオープンした。1階は考古資料展示室と企画展示室、大講堂などがあり、2階は4室からなり特別展会場となっている。 私にとっての平成館は《鏡》である。勿論、三角縁神獣鏡も見るけれど、方格規矩四神鏡・四神十二支鏡・だ龍鏡・盤龍鏡・三角縁竜虎鏡など、龍の図柄の鏡も多く興味が尽きない。 法隆寺宝物館(法隆寺献納宝物) 法隆寺宝物館は平成11年(1999)に開館、2016年4月にリニューアルオープン。ここには明治11年(1878)年に法隆寺から皇室に献納され、戦後国に移管された宝物約300件を収蔵・展示されている。これらの文化財は、正倉院宝物と双璧をなす古代美術のコレクションとして高い評価を受けているが、正倉院宝物が8世紀の作品が中心であるのに対して、それよりも一時代古い7世紀の宝物が数多く含まれていることに特徴がある。 表慶館 1909年(明治42年)、東宮皇太子嘉仁親王(のちの大正天皇)の成婚を祝う目的で開館した、日本ではじめての本格的な美術館。当初は美術工芸の展示場とされ、平成館の開館までは考古資料の展示に使われていた。建物は重要文化財に指定されている。 黒田記念館 黒田記念館は、洋画家黒田清輝の遺言により、その遺産によって昭和3年(1928)建てられ、黒田清輝の油彩画約130点、デッサン約170点、写生帖などを所蔵し、特別室と黒田記念室で展示されている。 資料館 資料館では、展覧会カタログや美術・歴史の関連図書を閲覧することができる。 エピローグ 本館北側の庭園が3月14日から5月7日まで公開されている。庭園には由緒ある応挙館など5棟の建物が点在し、約10種類もの桜が次々と開花する。 ホームページ《サイバーギャラリー:東博の龍》で紹介している最も古いものは2009年の《銅造華原磬(どうぞうかげんけい)の龍》である。今回数えてみたら80点余りの龍に謂れのある作品を紹介しており、また、これまでに撮影しホームページにアップしていないものも10点近くあることが分かった。【生部圭助】 ホームページ《サイバーギャラリー:東博の龍》はこちらでご覧ください 編集後記集へ |