《BuRaLi(ぶら~り) e 上野:上野にいる謎の龍を探そう》のスタッフの一員として参加した
【メルマガIDN編集後記 第375号 171201】


 文部科学省 国立教育政策研究所 社会教育実践研究センターでは、毎年秋に上野の山文化ゾーンフェスティバルに合わせて《BuRaLi(ぶら~り) e 上野》を開催している。2017年はその第4弾として計画された《上野にいる謎の龍を探そう》に31名の応募(28名の参加)があり、11月22日の秋の午後に上野の山を散策した。
 2017年5月より都合6回の「勉強会」と称する準備のための会合が行われた。私のホームページ『龍の謂れとかたち』を見た事務局のIさんより、メールで「勉強会」への参加要請があり、第4回よりメンバーに加えてもらった。そして開催当日の出発前に、「ミニレクチャー」として、龍の起源、龍を崇める、神社仏閣で龍に出会う、龍アラカルトなど、龍について20分ほどお話をした。

チラシ 《BuRaLi(ぶら~り) e 上野 上野にいる謎の龍を探そう》



竜首水瓶(りゅうしゅすいびょう)
銅製鍍金・鍍銀。高さ49.9cm 胴径19.9cm



修復後の上野東照宮の唐門  修復後2014年から公開


唐門の両側に銅燈籠がある(左右に3基ずつ)


清水堂の手水屋  梁の上部に龍の彫刻がある


上野不忍池辨天堂の手水屋  妻側に龍の彫刻がある


上野不忍池辨天堂の中陣の龍の天井絵《金竜》 児玉希望(画)


 以下に、今回巡ったコースの順に、その概略を紹介する。
国際子ども図書館
 国際子ども図書館は、国内外の児童書とその関連資料に関して、サービスを国際的な連携の下に行う国立の児童書専門図書館である。児童書や関連資料の閲覧、複写、レファレンス・サービス などの「閲覧サービス」、子どもに対するサービスとしては、小学生以下の子どもたちのための児童書及び中高生のための調べものの資料を提供するとともに、おはなし会等の子ども向けイベントを行っている。
 同図書館では、内部を案内してもらいながら、龍が登場する絵本、書籍などの紹介があった。

東京国立博物館 法隆寺宝物館の竜首水瓶(りゅうしゅすいびょう)
 竜首水瓶は法隆寺献納宝物(国宝)で、竜をかたどる蓋と把手を付けた勇壮な姿の水瓶。いかめしい顔の龍頭が注口、細い龍身が把手となり、蝶番(ちょうつがい)で把手に留めた龍の上顎が蓋となっている。
 胴には四頭のペガサス(天馬)を線刻で表す。胡瓶とも称される器形に、東洋と西洋にそれぞれ起源をもつ竜とペガサスの意匠がよく調和している。器胎の金銀の色彩対比とともに、緑色ガラス製の竜眼が光彩を放つ。
 7世紀の唐時代の作とされるが日本の作(白鳳時代)だとの説もある。

上野東照宮:唐門の龍の彫刻と燈籠の龍のレリーフ
 危篤の家康に呼ばれ、末永く魂鎮まるところを作ってほしいと遺言された藤堂高虎と天海僧正は寛永4年(1627年)に藤堂家の屋敷地に東照宮を造営した。現存する社殿は、三代将軍・家光が造営替えしたもの。
<唐門の龍の彫刻>
 慶安四年(1651)に造営された東照宮の唐門(明治40年に国宝に指定)は、日本に一つしかない金箔の「唐破風造り四脚門」。
 扉には亀甲の透彫り、柱内外の四額面には不忍池の水を飲みに行ったと講談などでなじみの深い、左甚五郎作の昇竜・降竜の彫刻がある。門の側面左右上部にある松竹梅に錦鶏鳥の透彫は精巧を極めたものである。
 上野東照宮は、2009年1月から2013年まで修復工事が行われ、2014年から公開された。

<唐門の両側にある銅燈籠>
 唐門の両側に6基の銅燈籠(昭和17年国宝指定)がある。内側より紀伊・水戸・尾張の御三家が奉献したもの。6基の銅燈籠の中台の8面には龍のレリーフが施されてあり、笠についている蕨手も龍のかたちをしている。

清水堂の手水屋の建物の龍の彫刻と吐水口
 寛永8年(1631年)に、寛永寺の開祖天海僧正が京都清水寺を模して清水堂を建立した。元禄年間(1688-1703)初めころに、寛永寺根本中堂建立のため現在地に移転した。
 ここの子育て観音は信仰厚く、願いが叶うと人形を奉納した。秋の彼岸会には人形供養が行われる。本堂及び厨子は国の重要文化財に指定されている。広重の「名所江戸百景 上野清水堂不忍ノ池」にも描かれている。
 本堂の手前にある手水屋の建屋の正面の梁の上部に、横に長い龍の透かし彫りがある。吐水口の龍は、最も標準的な形をしている。

上野不忍池辨天堂の手水屋と中陣の龍の天井絵
 寛永2年(1625)天海僧正は、比叡山延暦寺にならい、上野台地に東叡山寛永寺を創建した。不忍池は、琵琶湖に見立てられ、竹生島に因んで常陸下館城主の水谷勝隆が池中に中之島(弁天堂)を築いた。
 竹生島の宝厳寺(ほうごんじ)の大弁財天を勧請し建立した弁天堂は、昭和20年の空襲で焼失し、昭和33年9月に再建された。弁天堂本尊は慈覚大師の作と伝えられる八臂の大弁財天、脇士は毘沙門天と大黒天である。

<手水舎の建物の龍の彫刻と吐水口>
 本堂の手前の左側にある手水舎の妻面(両面)に龍の彫刻がある。東面が昇り龍で西面が降り龍に見える。

 手水舎の吐水口は、石造りかコンクリートを固めたものかわからないが、一部コケや植物におおわれている。自称龍楽者にとっては龍に見えるが、龍であるか定かではない。

中陣の龍の天井絵(児玉希望 画)>
 中陣の天井には、昭和41年に児玉希望画伯(1959年日本芸術院会員)により描かれた《金竜》がある。
 児玉 希望の本名は省三(1898年~1971年)、広島県高田郡(現安芸高田市)出身の水墨に生きた日本画家。また、天井のわきには、児玉画伯の画塾の門下生によって季節の花が描かれている。

エピローグ
 今回の見学コースに「擂鉢山古墳」がある。上野公園にはいくつかの古墳の存在が確認されているが、現在実存するのは、この古墳だけである。この古墳の規模は長さ70m、後円部径43m、前方部の幅は最大で23m。この古墳の高さは5mで、上野公園の中で最も高いところである。
 『上代の東京と其周期』を書いた鳥居 龍蔵(1870-1953)の名前にちなんで、《上野にいる謎の龍を探そう》のコースに加えられた。

 上野東照宮の唐門の柱内外の四額面にある左甚五郎作の昇竜・降竜の彫刻について、上野東照宮の栞には「偉大な人ほど頭を垂れるということから、頭が下を向いているものが昇り龍と呼ばれています」と記されており、通常の昇り龍と降り龍とは向きが逆である。


 私のホームページ『龍の謂れとかたち』に、上野で出会った龍たちを紹介しているが、今回スタッフに入れてもらった後に加えたものも含めて14アイテムの龍が出そろった。
 東京国立博物館は私にとって龍の宝庫ともいえるもので、たびたびカメラを持って訪れる。作成したホームページを数えてみたら92アイテムあった。

 国際子ども図書館で作成してもらった「“”が登場する絵本のブックリスト」は参加者に配布された「フィールドノート」に掲載されている.。ここには絵本以外の書籍も紹介されており、私にとっても貴重な資料となった。
【生部 圭助】

上野で出会った龍と仲間たち
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