箱根神社の境内社である九頭龍神社(新宮)
【メルマガIDN編集後記 第380号 180215】

 2018年の元旦に箱根神社へ初詣に行って、境内社の九頭龍神社(新宮)にもお参りした。九頭龍神社(新宮)の手水所で吐水口として使われている九体の龍を以前から見たいと思っており、やっと念願かなった。芦ノ湖の湖畔にある本宮は箱根神社と同時期に創建され、新宮は、お参りしやすいようにと、箱根神社の境内社として2000年(辰年)建立されたことを初めて知った。


九頭龍神社
元旦の参拝客で混雑していいる


九頭龍神社新宮の扁額


龍神水


手水所


手水所の九体の龍  詳細はこちら


九頭龍神社の絵馬 詳細はこちら

箱根神社
 箱根山には古来から山岳信仰があった。人皇第五代孝昭天皇の御代(2400有余年前)聖占上人が箱根山の駒ケ岳より、同主峰の神山を神体山として祀って以来、関東における山岳信仰の一大霊場となった。
 箱根神社は、その中心として関東総鎮守箱根大権現と信仰されてきた名社であり、交通安全・心願成就・開運厄除に神徳の高い運開きの神様として信仰されている。箱根神社の創建は757年。

 鎌倉期、源頼朝は深く箱根神社を信仰し、二所詣(当神社と伊豆山権現)の風儀を生み、執権北条氏や徳川家康等、武家による崇敬の篤いお社として栄えた。
 明治の初年の神仏分離により、関東総鎮守箱根大権現は、箱根神社と改称された。

九頭龍神社(本宮)
 奥宮である九頭龍誕生の聖地に鎮まる九頭龍神社 (本宮)は、箱根神社の境外社である。箱根神社に続いて天平宝字元年(757年)万巻上人が、芦ノ湖の龍が暴れているのを調伏し、守護神として九頭龍大明神(おおがみ)を祀った。
 箱根の九頭龍大明神は水神であるとともに、商売繁盛や、縁結びの御利益があるとされる。

九頭龍神社(新宮)
 九頭龍神社(新宮)は箱根神社の境内社として、拝殿に隣接して、平成12年(2000年 辰年)の元旦に建立された。新宮は湖水祭が斎行される神聖な祭場に鎮まる里宮である。
 箱根神社の境内にある新宮の隣には「安産杉」がある。箱根の九頭竜はこのため安産の神としても有名になった。鎌倉時代に、源頼朝が箱根神社に安産の祈願をしたところ、3代将軍源実朝が無事誕生したとされ、以後、安産の祈願を箱根神社に行う風習が広まった。

手水所と龍神水
 九頭龍神社の側の階段を降りると、手水所があり、九体の龍を見る。龍の口から水が流れ落ちているのは、境内から湧き出たご「神水」。この水は箱根大神が鎮座する箱根山を源とし、権現御手洗の池と称し、九頭龍神が守護する芦ノ湖を湧き満たす龍神甘露の水である。
 平成22年、天皇陛下御即位20年奉祝記念事業のひとつとして境内に新しく御井を穿ち、水脈から湧き出る霊水は、12月23日の天長祭の日より、九頭龍神社新宮前の龍神水に流れを進めた。
 掌にうけて口に漱げば一切の不浄を洗い清め、良い物を引き寄せると言われている。また、九頭龍神社は、恋愛の神様を祀っていることから、このお水を飲むと恋愛運が上昇する、と話題になっている。

箱根の九頭龍伝承
 関東総鎮守として箱根山に鎮座する「箱根大神」が生み出だす生命の根源である水の力を、芦ノ湖の守護神として司ってきたのが九頭龍神である。
 芦ノ湖がまだ万字ヶ池と呼ばれていた奈良時代以前、箱根の村には、毎年若い娘を選んで芦ノ湖に棲む毒龍に人身御供として差し出すという習慣があった。箱根山で修行中の万巻上人が、この事を知ると、法力で毒龍を改心させて村人達を救うと決意した。

 万巻上人は湖畔で経文を唱え毒龍に対して人身御供を止めるように懇々と仏法を説いた。ついに毒龍は宝珠・錫杖・水瓶を携えた姿で湖から出現すると、過去の行いを詫びた。
 万巻上人はそれでも鉄鎖の法を修し、龍を湖底の「逆さ杉」に縛り付け、仏法を説き続けた。龍は、もう悪事はせず、地域一帯の守り神になる旨を約束する。万巻上人は龍の約束が堅いことを知り、九頭龍大明神としてこの地に奉ることにした。【wikipedia「九頭竜伝承」より要約】

 九頭龍神社(本宮)の祭りは、その満願の日の毎年6月13日(旧暦では14日)が例大祭、毎月の13日が月次祭である。毎年7月31日には「湖水祭」も行われている
 今でも芦ノ湖の湖水祭では、人身御供に代えて赤飯を湖に捧げている。赤飯の入ったお櫃を御供船に載せ、逆さ杉のところで湖底に沈めるのである。このお櫃が浮かび上がってくると、龍神が人身御供を受け入れなかったとされ、災いが起きると言われている。

エピローグ
 九頭龍については、伝承された地域や九頭龍大神(おおがみ)が祀られている神社が全国にたくさん見受けられる。
 伝承地としては、九頭竜川流域(福井県)、鹿野山(千葉県)、別府温泉(長野県)、三井寺(滋賀県)、豊能地域(大阪府)、など。
 九頭龍大神が祭られているところとしては、箱根神社の他に、戸隠神社(長野県)、九頭竜大社(京都府京都市)、その他、多く存在している。全国に散らばる九頭龍伝説としては、箱根の九頭龍神社と同じ調伏・鎮静型の伝承が多い。

 もともと九頭龍は仏教から派生した神であり、仏教の元となったインドの神話では猛毒を持つ大蛇「ヴァースキ」とされ、仏教に取り入れられる時に仏法を守護する八大龍王の一柱「和修吉(わしゅきつ)」となった。和修吉は毒牙を収めて善神として日本へ輸入され、日本における「善い龍」が定着してゆくことにつながったと言えよう。【生部 圭助】

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