編集後記集
【メルマガIDN 第164号 090201】

■編集後記 横浜中華街を守護する四神
 メルマガIDN第162号で《四神の信仰》について書いた。高松塚古墳、平安京、江戸城、平安神宮などが、四方より守護神神にまもられている事例を示した。また、第163号では、全方位を守護する千葉神社の《妙見尊》について書いた。前者は、《守護され》、後者は《守護する》お話である。今回は、四神に守護される横浜中華街について書くことにする。
 
横浜中華街の始まりと今
 1859年に横浜が開港し、その後、横浜と上海・香港間に定期船航路が開設されると、中国人貿易商も来住し、居留地の一角が横浜中華街の起源となる。この頃には中華料理店は多くなかった。

 1894年に日清戦争が勃発すると中国人の多くが帰国してしまうが、戦争が終わり、1899年に条約改正により居留地が廃止されると、居留地外にも住むことを許され、中華街は急速に人口が増えて発展した。

 1923年に発生した関東大震災で中華街は大打撃を受け、その後復興したものの、1937年に日中戦争が勃発すると停滞期に入る。戦後の復興期に横浜港は賑わい、香港との往来も復活した。

 1955年に中華街大通りの入り口に《牌楼門(後に立て替えて善隣門となる)》が建てられ、牌楼門の上に《中華街》と書かれた。それまでは南京町と呼ばれていたが次第に《中華街》と呼ばれるようになった。

朝陽門(東:青龍)

朱雀門(南:朱雀)

延平門(西:白虎)

玄武門(北:亀と蛇)

 2004年2月に横浜高速鉄道みなとみらい21線が開業し、終着駅として元町・中華街駅が設置され、東京の渋谷駅から東急東横線が直通中華街へ行くことが出来ることが話題になった。

 現在では、約0.2平方キロのエリア内に500店以上の店舗がひしめいている日本最大の中華街となり、神戸南京町や長崎新地中華街とともに三大中華街とされている。
 
四神の信仰
 古来、中国では皇帝が王城を築くときに城内の安全と繁栄を願って東南西北に限って通路を開いて、各方位の守護神として四神を置いたとされる。北は玄武(亀と蛇)、東は青龍、南は朱雀(鳥)、西は白虎という神獣がそれぞれ鎮護するというもの。

 四神は方位のほか、四季では《春・夏・秋・冬》、一日では《朝・昼・暮・夜》、色としては《青・赤・白・黒》、地勢としては《流水・湖沼・大道・丘陵》などの意味づけがされており、それぞれが役割を担っている。

 一日の移り変わりを例にとると、東方の霊気は青龍神が見張り、陽気が南方に入ると朱雀神に引き継ぎ、西方に移ると白虎神が受け、陰気が満ちる夜になると北方を玄武神が守護する。
 
風水に基づく横浜中華街の牌楼(パイロウ・門)
 横浜中華街には現在、10基の牌楼(パイロウ・門)が建っている。その中の4基が風水思想に基づいて建てられている。
 横浜中華街の地図上に、青龍と白虎の東西軸と朱雀と玄武の南北軸を書いてみると直角になっていない。また、方位も正確には東南西北に合致していない。方位軸が45度ずれていると書かれているものもあるが、45度も正確でないように見える。

 横浜中華街は、皇帝が王城を築くときに行った都市計画とは違って、街が出来て、時代と共に増殖して今日の姿になったことを考えると無理もないことである。四つの牌楼(門)をつくり、横浜中華街の安全と繁栄を願っている気持ちは十分に汲み取れる。

 以下に、四つの牌楼(門)を紹介する。中華街で、おいしい中華料理を食べ、散策しながら目に入ってくる牌楼(門)の存在の意味についても理解していると、《街歩き》も、よりおもしろいことになると思う。
 
東:朝陽門(チョウヨウモン)
 山下公園側に位置する。みなとみらい線の元町・中華街駅からこの牌楼を通って中華街へ入る。
 日の出を迎える門であり、朝日が街全体を覆い繁栄をもたらす、とされる。守護神は青龍神。シンボルカラーは青。
 2003年2月1日に落成。高さ:13.50m、幅:12.00mであり、中華街で最大の門である。
 
南:朱雀門(スザクモン)
 元町側からは朱雀門を通って中華街に入る。南門シルクロードを通って、朝陽門近くの五叉路に至る。道厄災をはらい、大いなる 福を招く、とされる。守護神は朱雀神(鳥)。シンボルカラーは赤。
 初代は1976年、2代目は1995年に完成。高さ:13.6m、幅:8.00m

西:延平門(エンペイモン)
 JR石川町中華街口(横浜よりの出口)より出たすぐのところに、《西陽門》がある。龍の彫刻で囲まれ中華街と書かれた扁額をみて中華街へ向かう。5分ほど歩いたところに中華街の西の入り口である延平門がある。
 平和と平安のやすらぎが末永く続くことを願う、される。守護神は白虎神。シンボルカラーは白。
 初代は1970年、2代目は1994年に完成。高さ:12.00m、幅:11.5m。

 延平門をくぐって、西門通りを少し歩いた右側に《九龍陳列窓》がある。1月26日の春節を迎え《九龍陳列窓》はお正月の展示でにぎやか。龍舞の龍、縁起のいい言葉が書かれた掛け軸、爆竹、電飾などが飾られている。また、中国ではお正月に欠かせないお飾り金柑が両脇に置かれている。
 西門通りを歩いて善隣門をくぐって、中央街大通りを歩くと、東の入り口である朝陽門に到る。
 
北:玄武門(ゲンブモン)
 JR関内駅南口または、市営地下鉄線の関内駅を出て、横浜スタジアムの横を抜けると、大桟橋通りの向こう側に、中華街の北の入り口である玄武門が見える。玄武神は北の守護神で水の神。亀に蛇が巻き付いた姿を見る。
 玄武門を通って北門通りを歩くと、善隣門(立て替える前は牌楼門と呼ばれた)に到る。
 子孫の繁栄をもたらす、とされる。守護神は玄武神。シンボルカラーは黒。
 初代は1977年、2代目は1995年に完成。高さ:12.9m、幅:11.8m

 中華街には、ここで名前をあげたもののほかに、関亭廟通りに天長門、地久門、市場通りに市場通り門2基がある。《龍の謂れとかたち》に興味を持っている私としては、10基の牌楼(門)の中でも、守護神が青龍神である朝陽門を注目することになる。朝陽門には龍のレリーフがたくさんあり興味をそそる。【生部圭助】
【参考文献など:現地の案内板、横浜中華街のホームページ、Wikipedia等を参考にしました】

朝陽門のレリーフの写真はこちらにあります。興味のある方はご覧ください。
4つの門の拡大写真はこちらでご覧ください

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