私のホームページ《龍の謂れとかたち》では、出会った龍と仲間たちを紹介している。今回はお酒と龍のお話。蔵元の屋号、お酒や焼酎の名前にも龍が使われている例がたくさんある。今回はその中よりいくつかを紹介する。お酒のラベルに龍を見つけ、龍が4つ並んだ、最も字画数の多い漢字《龍龍龍龍 てつ》を知るという雑学にもつながっているから面白い。
銀座の松屋の前に《酒の穴》という名前の酒処がある。お店の中は、椅子席、小座敷、カウンター席で構成されている。会社時代にも時々通ったお店であり、小座敷を部署の懇親会に利用させてもらったこともある。 居酒屋や酒処は5時頃に開くところが多いが、このお店は4時に飛び込んでも開いているという珍しいお酒処。最近ではカウンター席がお気に入りである。カウンター席では、正面に日本中のお酒が所せましと並んでいる瓶の列を見ながらお酒を選ぶ楽しみがある。カウンターにはお燗用の湯槽があり、お酒の温度を保ちながら飲むことができる。 このお店に若い女性の穴頭のMさんが居た。ここでは店長のことを穴頭(あながしら)と呼んでいる。Mさんはこのお店で扱って空になった瓶のラベルをスクラップしており、そのスクラップを見せてもらった。スクラップは台紙の上にラベルを置いて、その上から透明のシートをコーティングするという丁寧なもの。この中に、龍の名前の付いたラベルがたくさんあった。 黒龍酒造については、《仁左衛門》、《しずく》、《八十八号》、《ひやおろし》、《大吟醸黒龍》、《純米吟醸黒龍》などのラベルがそろっていた。複数枚スクラップされているラベルのなかより、十四代《龍月》については、スクラップの台紙ごといただき、私の龍関連のスクラップの中に納まっている。 Mさんは気軽に了承してくれたので、お店の奥のスペースを借りて、スクラップの中より名前に龍が使われているお酒のラベルの写真を撮らせてもらった。 また、正面の棚に並んでいるたくさんの中から、龍の名前のついている一升瓶をカウンターに降ろして、写真を撮らせてもらった。 お酒の瓶に貼られているラベルは、蔵元の顔であり、お酒そのものを表わしている。黒龍酒造株式会社は、創業文化元年(1804年)、会社創立昭和23年4月(1948年)。「《ものつくり》の創造性を追求し、心のコミュニケーションとなる《酒》を提供すると共に、地域社会と自然環境を大切に見つめ、《感動、感激、感謝》の気持ちを持って社会に貢献する」と、蔵元の酒造りに対する思い入れを表現している。 《龍勢》は、瀬戸内海に面した広島県竹原市の藤井酒造の創業銘柄のお酒。江戸末期(文久3年)創業。現在も当時のままの蔵で酒造りを行っており、裏山の龍頭山から湧き出る井戸水で醸したお酒がとてもよかったことから名づけられた。ラベルの文字は、札幌市在住の若山雄雲の書とのこと。 焼酎《タイガー and ドラゴン》 龍虎の掛け軸や屏風はたくさん見るが、《タイガー and ドラゴン》という名の珍しい焼酎がある。チームファクトリーのプライベート・ブランドの芋焼酎(ギルド系焼酎)。製造蔵は種子島の四元酒造。種子島で採れる黄金千貫と白さつまを半々位の割合で使用し、白麹、タンク蒸留の後、機械ろ過をして2~3ヶ月寝かせてからの瓶詰めし出荷している。 なかなか、手に入りにくく、取り扱っている店は、特約店契約を結んでいるところだけとのこと。紫芋で仕込んだ「パープル タイガー アンド ドラゴン」は限定品で定価の4倍くらいの店もあるそうだ。 この焼酎と同名のドラマが始まってからこの焼酎が一気に知れ渡り、入手が困難になったとも言われている。 クレイジーケンバンドの《タイガー アンド ドラゴン》が、無名に近かったこの焼酎が有名になったことに一役かっているとか。ケンさんは、以前より和田アキ子さんのファンであり、この歌もゴッド姉ちゃんテイストが満載。あっこさんもこの、タイガーをカバーしたり、楽曲を提供してもらったりと交流が始まった。 この焼酎の四合瓶の裏面のラベルには、必要事項の記載のほかに、「虎の如く、うまい酒をかぎわけ龍神の如く、がぶ飲みする。この者を馬鹿者と、呼ぶ」と書いてある。 「意外とスムーズにクイクイ飲めてしまうほど優しい味わい。最近ネット上などのランキングに上位入賞するなど、話題性が高い焼酎」。これは、タイガー アンド ドラゴンのファン達のことばである。 常温のストレート(25度)では柔らかい味わいであるが、暑い日にオンザロックで飲むと締まった味がするおいしい焼酎だ。 幻の酒米愛山使用の酒《龍龍龍龍(てつ)》 4つの《龍》という字が使われている名前のお酒を見つけた。山形県南陽市の山栄遠藤酒造店の幻の酒米愛山を使用した純米大吟醸酒で、手間ひまをかけ造りあげた純米大吟醸という意味もある。 味わいは、愛山独特のやわらかさとふくらみのある上品な仕上がりとのこと。 山形県観光物産会館のホームページでこのお酒を見つけ、写真がほしいとお願いしたら、会館の企画販売課の方が写真を送ってくれた。四合瓶で3,200円の値段がついている。まだ飲んではいない。 64画の漢字《龍龍龍龍 てつ》 朝日新聞のコラム《漢字んな話 龍4匹集まり井戸端会議》で写真に示す漢字が、一番画数の多い漢字の例として紹介された。 龍が四つで出来た64画の漢字。この漢字を載せている辞典は少ないらしい。 この漢字は《てつ》とか《てち》と読む。《言葉が多い 口数が多い》つまり《おしゃべり》という意味があるが、辞書にも用例はないという。 この字を名前に使った人がおり、小野 梓(おの あずさ)の子供の頃の名前が《龍龍龍龍一(てついち)》という。大隈重信と早稲田大学の創立にかかわった人。 エピローグ 名前に《龍》のあるお酒や焼酎はたくさんあり、私のホームページで紹介しているものはごく一部である。今は、積極的に集めたり飲んでみたりはしていないが、出会うことがあったら、集めることは続けたい。 《龍月》は以前の《龍泉》から名称が変わったそうである。かつて、インターネット・オークションで100万円の値がついていた、とブログに書いた人が居る。ワインの世界では考えられるが、本当の話だろうか。 100万円は別格としても、四合瓶で1万円近くもするお酒は気軽に飲むことができない。穴頭のMさんのスクラップは私にとって貴重だった。現在は穴頭が変わって、Mさんはお店にはいない。【生部圭助】 詳しい謂れや写真はこちらより、メニューの《飲食(酒・菓子)》のところからご覧ください。 |