龍の謂れとかたち
龍の謂れとかたち
カルタに見るドラゴンエース
由来
天文12年(1543)ポルトガル船の種子島漂着。ポルトガル人が九州の各港に来航
キリスト教や鉄砲などとともにカルタも伝えられた
ポルトガルのカルタには、4枚のエース札に龍が描かれ、ドラゴンエースと呼ばれている
図説 カルタの世界
このたび、大牟田市教育委員会より、
『図説 カルタの世界』(江橋 崇 横山恵一監修平成14年大牟田市立三池カルタ記念館 発行)
に掲載されている写真を複写し私のホームページへ掲載することの許可をもらったので
「龍の謂れとかたち」のメニューを増やすことができた
19世紀半ばにポルトガルで作られた貴重なカルタの写真も紹介する。
図説 カルタの世界 江橋 崇 横山恵一監修
平成14年 大牟田市立三池カルタ記念館 発行
天正カルタの復元
ポルトガルからもたらされたCartaの実物は、ポルトガルでもわが国でも未発見
摸してわが国で作られたカルタが1枚、兵庫県芦屋市の滴翠美術館に現存している
天正年間(1573〜1591)に作られたことから、俗に「天正カルタ」と呼ばれている。
大きさ縦6.3センチ、横3.4センチ
三池カルタ記念館は平成3年に
「天正カルタ」1セット48枚(4スーツ×12枚)を400年ぶりに完全復元した
京都で今も手作リカルタを手掛けている職人に復元製作を依頼
サイズは現物よりひとまわり小さい
天正カルタはカルタというよりトランプ(カード)に近い
トランプのスーツ(紋標)はスペード・ハート・ダイヤ・クラブであるが、
「天正カルタ」では、ハウ(棍棒)・イス(剣)・コップ(聖杯)・オウル(貨幣)
(スーツ(紋標)については最後尾に説明あり)
天正カルタ(桃山期 平成3年 三池カルタ記念館が復元) 【図説カルタの世界より】
上より下へ、ハウ(棍棒)・イス(剣)・コップ(聖杯)・オウル(貨幣)
左より、ピン(一)・二〜九・ソータ(女従者)・ウマ(騎士)・キリ(王)
天正カルタのドラゴンエース 【図説カルタの世界より】
左より、ハウ(棍棒)・コップ(聖杯)・オウル(貨幣)・イス(剣)
うんすんカルタ
天正カルタの4種類のスーツに巴紋が加わる
数を15まで増やして5スーツ×15枚=75枚
絵札(10〜15)の中に鎧兜の武者や七福神の恵比寿・大黒・福禄寿などが含まれる
元禄年間(1688〜1704)に考案された和製
うんすんカルタは幕府公認のカルタで 遊戯性の強いものだったが
賭博の道具にされたため寛政の改革で全面禁止、約100年で消滅
ポルトガル語でウンはエースの1、スンは最高を意味し
遊戯中、切り札のエースと最強の絵札を出すとき「ウン」とか「スン」と声を掛けた
うんすんカルタ 5スーツ×15枚=75枚 【図説カルタの世界より】
上より下に、ハウ(棍棒)・イス(剣)・コップ(聖杯)・オウル(貨幣)・クル(巴)
左より、一〜九・ウマ・キリ・ロハイ・ソータ・スン・ウン
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うんすんカルタのドラゴンエースが載っている 『うなゐの友 第七編』(大正6年5月発行)
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うんすんカルタのロハイ(龍) 【うなゐの友 第七編より】
左より、ハウ(棍棒)・イス(剣)・コップ(聖杯)・オウル(貨幣)・クル(巴)
本『ポルトガルの龍』に見る古い時代のドラゴンカード
シルビア・マンとヴァージニア・ウエイランド著により1973年に出版された本
日本にかかわる記述があり、「天正カルタ」や「うんすんカルタ」についても述べられている
表紙に3枚の龍のカードが載せられている 本文の中の挿絵の説明に
17世紀に作られたポルトガルのカルタ デザインは1600年より以前に日本でコピーされた、とある
1543年にポルトガル船が種子島に漂着 その後ポルトガル人が九州の各港に来航
1600年より以前に、デザインが日本に伝えられ、「天正カルタ」のデザインに使われた
芦屋市の滴翠美術館に保存されている当時のカルタ(1枚のみ存在)のデザイン
周辺に斜線の縁取りがあるのも類似している
【このフレーズは、私の勝手な推測】
『ポルトガルの龍』(1973年発行)
シルビア・マンとヴァージニア・ウエイランド著
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17世紀に作られたポルトガルのカルタ 【ポルトガルの龍 の表紙より】
左より、コップ(聖杯)・イス(剣)・ハウ(棍棒)
ドラゴンカードの事例−1
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19世紀半ばにポルトガルで作られたカルタのドラゴンエース 【横山恵一氏所蔵のカルタを複写】
左より、ハウ(棍棒)・オウル(貨幣)・イス(剣)・コップ(聖杯)
ドラゴンカードの事例−2
ポルトガルのドラゴン・カード 1830年代 【図説カルタの世界より】
左より、ハウ(棍棒)・イス(剣)・コップ(聖杯)・オウル(貨幣)
ドラゴンカードの事例−3
ジャワ島のオミ・カルタ〔インドネシア〕 1929年 【図説カルタの世界より】
左より、聖杯のエース・貨幣のエース
ドラゴンカードの事例−4
スラウエシ島のオミ・カルタのドラゴンエース〔インドネシア〕1990年代 【図説カルタの世界より】
左より、貨幣のエース・聖杯のエース・棍棒のエース・剣のエース
スーツ(紋標)について
刀剣=スペードは貴族ないし騎士 聖杯=ハートは僧侶
貨幣=ダイヤは商人 棍棒=クラブは農民
カルタ(トランプ)の札の強弱はこの順位になっており 中世の身分階級を示している
スペード〜クラブのマークは15世紀ころフランスで考案された
デザインがしゃれている上に一目で種類がわかり、しかも印刷に手間がかからないことなどから、
やがて世界で広く用いられるようになったという
イギリス:スペード・ハート・ダイヤ・クラブ
フランス:槍・クローバー・心臓・敷石
オランダ:スコップ・棍棒・心臓・ダイヤモンド
スイス:旗・どんぐり・バラ・鈴
ドイツ・オーストリア・ハンガリー:木の葉・どんぐり・心臓・鈴
イタリア:曲刀・棒杖・聖杯・貨幣
スペイン・ポルトガル:直剣・棍棒・聖杯・貨幣
【図説カルタの世界 2.カルタの起源 より】
070721/0724
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