謂れとかたち
自在龍 明珍清春(驚きの明治工芸)

自在龍 明珍清春 長さ:36.0cm 江戸時代 宋 培安コレクション
《驚きの明治工藝》 東京藝術大学大学美術館で2016年9月7日から10月30日に開催

明治工藝
日本では、彫刻をはじめとする立体的な造形は仏像が中心だった
江戸時代になると、工芸の世界では、動物や植物の姿を写実的にとらえ、それを再現する作品が見られるようになり
日本の工芸は技術的に大きな発展を遂げた
その代表的な例に、鍛金による自在置物があげられる
江戸時代には、平面上に金や銀の蒔絵によって文様を表現する漆工において写生画のように植物を描いた作品が現れる

宋 培安コレクション
宋 培安コレクションは現在台湾における最も大規模な日本工芸のコレクション
収蔵数は3000点にも及ぶ
宋培安コレクションには、明治工藝の基となった江戸時代末期の技巧を凝らした作品から
明治時代を中心に昭和初期頃までの、漆工、金工、陶磁、七宝、染織、ビロード友禅とすべてのジャンルを網羅している

自在置物
自在置物(じざいおきもの)は、日本の金属工芸の一分野として位置づく
鉄や銅、銀、赤銅(金と銅の合金)、四分一(銀と銅の合金)などの金属板を素材として
龍、蛇、鳥、伊勢海老、海老、蟹、蝶、蜻蛉などの動物の模型を写実的に作る
その動物が本来的に持っている胴や手足などを動かせる機能までをも再現した置物である
それらの体節・関節の部分を本物通りに動かすことをも追求し
そのための複雑な仕組みを内部に施すところに大きな特徴である

自在置物の動く仕組み
蛇や龍などは鱗を刻んだ一単位の円筒を、ひと回りずつ大きさを変えていくつも作り
それを連結して鋲留めにしていく
昆虫の足は、関節を蝶番のように作り、鋲留めしている

明珍清春
戦国期に発達した鎧甲冑師達が江戸期初期)に
彼等の仕事が無くなった事から鎧甲冑製作の代わりに、自在置物を作り始めたのが最初と言われている
《明珍》とは平安時代より連綿と続く日本で一番有名な鎧甲冑制作集団の流派
江戸時代の自在置物作家はその多くが明珍派の甲冑師で、その名は江戸末期まで、代々受け継がれた



自在龍 明珍清春 展示風景(右)


自在龍 明珍清春 長さ:36.0cm 江戸時代


自在龍 明珍清春 側面-1


自在龍 明珍清春 側面-2


自在龍 明珍清春 龍の頭部

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