ある月夜に十二獣が月を題材に歌合わせを行う。そこへ狸を伴った鹿が現れ判者を申し出る。戌が出て来て追い返そうとするが、鹿は自分が「歌仙の一分」であることを述べ、龍がその場をまとめ、鹿が判者となり歌合わせが始まる。歌会は滞りなく進み、歓待の宴になる。十二支はそれぞれ珍しい肴を持参して鹿を接待する。その様子を狸はうらやましそうに見る。
数日後、十二支獣は再び歌合わせの会を企画し、鹿に判者を依頼するが、鹿はこのたびは辞退する。先日の様子をうらやましく思っていた狸が、自分ではどうかと申し出た所、場違いの不心得者と、十二支獣に罵倒され、打擲されて、命からがら逃げ帰る。
<ここから下巻>
狸はこの恨みをはらそうと、狼、狐、鳶などの仲間を集めて復讐戦をもくろむ。狸の動きを察知した十二支は先手を打ち、勝利したが、狸を捕らえることが出来ない。翌日の戦に備えて野宿して酒宴をはる。この様子を見張っていたトビが洞穴に隠れている狸に夜襲を勧める。狸は仲間を呼び戻して夜襲をかけて十二類を蹴散らす。
十二支は体勢を立て直し反撃する。狸軍はちりぢりとなり、狸は命からがら逃げ出す。一旦は鬼に化けて十二獣をかみ殺そうとするが犬に見破られる。
狸はついに恨みつらみを捨て、仏道の悟りを開くため、妻子に別れを告げ、法然上人門下の弟子となり、夜な夜な腹鼓をうって念仏を唱え、京の西山の庵に隠棲する。狸は和歌への執着だけは捨てきることが出来なかった。
|